米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き問題が引き起こした経済危機の影響がなおその余韻をとどめ、米国や日本などの西側主要国の中央銀行が実施した大規模な量的緩和政策が世界経済の安定に深刻なダメージを与えているが、中国国内では相対的に過剰な資本、膨大で急増する外貨準備、人民元への長期的な切り上げ圧力といった基本的な要因は変わらず、ますます多くの中国企業が国境の枠を超えて縦横に一体化する道を探るべき段階にきている。また他国の経済危機が一層深刻化することは、中国企業の対外投資の市場参入にあたっての障壁や経済コストを引き下げるのにプラスになる。よって、中国のFDIは引き続き急速な発展ペースを維持するとみられ、国内・海外の学術関係者の中には、中国のFDI流動量は外資系企業による直接投資の導入額を迅速に超えるとの見方を示す人もいるくらいだ。
中国は急速に成長する新興のFDI拠出国であり、ますます多くの国などが中国に投資を求めるようになっている。アフリカのある国などは、大統領と外務大臣がまもなく中国に赴任する外交官にアドバイスする際、「あなたの仕事ぶりを評価するハード面の指標は、中国からどれくらいの投資を引き出せるかだ」と伝えるという。中国が引き寄せるのは発展途上国ばかりではない。少なからぬ西側諸国も中国に引き寄せられており、英国のような自由貿易の伝統があり、中国と優勢産業が重ならない先進国が特に強く引き寄せられているという。
中国のFDI発展という大きな流れの中にあって、一部の中国企業は世界の多国籍企業ランキングで上位への飛躍を遂げた。UNCTADの「世界投資報告書」2009年版によると、08年には、非金融分野の多国籍企業の国外資産ランキング(上位100社)の中で、中国中信集団公司が88位に入った。「中国商務年鑑・2010年」によると、発展途上国・地域の非金融分野の多国籍企業の国外資産ランキング(上位50社)には、7つの大陸部企業が入った。中信集団(7位)、中国遠洋運輸(集団)総公司(10位)、中国建築工程総公司(15位)、中国石油天然気集団公司(30位)、中国中化集団公司(42位)、聯想集団有限公司(48位)、北京持ち株集団有限公司(49位)の7社だ。