この度、菅直人首相が辞任する理由は経済不況ではないが、就任中、大地震や日本国債格下げによる経済的な打撃は大きかったはずだ。このため、日本のバブル崩壊後の「失われた20年」を語る時、日本経済はストップしたまま20年間低迷を続けていると認識する人も多いようだ。だが、これは大きな誤解である。
日本経済に「失われた20年」はなかった
もとから日本経済には「失われた20年」はなかったのだ。1985年のプラザ合意による急激な円高誘導により、日本円は2.4倍に上がった。これにより、株式市場、不動産市場に資金が一気に流れ込んだ。その後、日本政府の支援や誘導もあり、その投資先は国内から海外の資源や資産、海外株式や外国債券へと広がっていった。日本国内では1987年7月以降、株式・不動産投資に対する金融機関の貸し出しが厳しくなり、同年末には貸し出しが完全にストップした。だが国外投資には無利息貸し付けを行なったりしている。この20年、国外における日本企業の成長率は国内の1.8倍にのぼり、世界の市場、産業において日本企業が関わっていない分野はほとんどないほどになった。対外資産は40倍に、対外純資産は60倍に、外貨準備も数十倍に膨れ上がっている。
こうした状況下で、国内経済が低迷していたのも事実である。だが20年間、ほとんどマイナス成長を見せることなく、限られた資金で日本経済を支え続けてきたことは奇跡といってよいだろう。そのため、この20年は、「失われた20年」などではなく、日本が国外において高成長した20年であったといえるだろう。
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