廉価商品の展開がインド式成長の特徴
実際のところ、インドの廉価商品攻勢は「アーカッシュ」のみに止まるものではない。16ドルの浄水器やら、2000ドルの心臓手術、2500ドルのNano自動車、665ドルのマンションなどというものまで売り出したことがある。
発展途上国であり、人口が多いうえに確固たる基礎がないという特徴を持つインドだが、その反面、成長めざましい経済体であり、国際的評価が高まりつつあることも事実として見逃せない。政府高官や大企業は、「インド製造業」が大国としての「顔」となることを期待している。
そういった背景で、三、四人の家族が一台のバイクにまたがって外出するという現状を小型車に乗ってもらうようにするために、世界最安のNano自動車を作ったのだし、情報産業大国としての立ち位置を示すために、世界最安のタブレットを作ったわけである。
しかし、このような安価商品が大衆に受け入れられるとは限らない。例えば、呼び声高かったNano自動車は発売から二年で10万台しか売れなかったし、同種の小型車が去年走行中の自然発火事故を連続して起こすという醜態もさらしている。
インドの諸問題はその多くが、人口の急激な増加とそれに比した資源不足に起因していると専門家は考える。人口が12億に達したこの国では、近代化した生産方法によって多くの商品を生み出せなければ、その想像を絶する数の人々は生活水準を上げることができないのである。