今年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の前にペルーで開かれている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の第9回交渉会合が終わろうとしている。結果はどうであれ、現在の国際経済・貿易秩序がさらに激しく揺れ動くことが予想される。これも、従来からの多国間の協力体制が現在の世界貿易の発展モデルに適応できないことによるものだ。ドーハ・ラウンドで10年経っても妥結できない世界貿易機関(WTO)を見ても、制度面の制約がないため周縁化のリスクがあるAPECを見ても、戦略的考えのある政策決定者の興味をすぐに引くことは恐らくないだろう。
伝統的な地域経済・貿易協力の方式は、新情勢における発展のニーズを満たすことはできない。TPPで主導権を握ることは、関係国が国際戦略を進めるうえで重要な一歩となるに違いない。そのため、日本の野田佳彦首相はTPP交渉参加を検討し、米国はこれまで知られていなかったTPP参加に必死になっている。米国がTPP参加に意欲的なのは、まず、アジアの経済発展の恩恵を受けたいためである。米国は5年で輸出を倍増させる計画を実施し、国内の雇用を増やし、アジア自由貿易圏の創設での孤立を避けたい考えだ。もう一つは、アジアで高まり続ける中国の影響力を抑えたいためである。中国の強大化を目にし、米国は政治、軍事、外交などの手段で中国の発展を抑えるほか、地域経済統合を利用してアジア経済の一体化における中国の影響力を弱めたいと考えている。