アップルの一連のシリーズ製品は「グローバル代理生産」の典型的な商品だ。ジョブズ氏の会社は設計と技術コントロールと市場販売に責任を負うだけで、生産加工プロセスはすべて「委託生産方式」によって、世界各国の川下のメーカーにアウトソーシングしてきた。「われわれは頭を使い、彼らは汗を流す。われわれはアイディアを出し、彼らは体力を売る」というわけだ。ここ数年来、ハイテクノロジーの特許を擁し、イノベーション能力に長けた多国籍企業が、ますます多く安価な加工プロセスと生産拠点を「出稼ぎ国家」に丸投げするようになった。1997年にジョブズ氏がアップル社に「復帰」した後、同社は最もうまく丸投げを行う企業となった。
多機能携帯電話(スマートフォン)「iPhone」(アイフォーン)の産業チェーンのバリュー分布をみると、状況が最もよくわかる。ある調査によれば、中国で組み立てられたiPhone端末の米国からの輸入価格は178.96ドルで(実際の小売価格はこの2倍以上になる)、うちフラッシュメモリ(24ドル)、ディスプレー(35ドル)は日本で生産され、情報処理機と関連部品(23ドル)は韓国で製造され、全地球測位システム(GPS)、マイクロプロセッサ、WIFI対応のビデオカメラといった製品(30ドル)はドイツで、ブルートゥース、録音部品、3G技術製品(12ドル)は米国でそれぞれ製造されている。このほか、材料費と各種ソフトウエアのライセンス料や特許使用料を合わせると48ドル近くになる。最後に中国での組み立て費用を計算すると、わずか6.5ドルしかない。つまり、富士康などの企業や数千人、数万人に上る中国人労働者は、あの流行の最先端の携帯電話のバリューのうち3.6%を享受するに過ぎないということだ。小売価格で計算するとこの数字は2%を下回る。
ジョブズ氏が亡くなる前に、アップル社の時価総額は一時3370億ドルに達し、石油大手エクソンモービルを抜いて世界一となった。これはマイクロソフト、ヒューレット・パッカード、デルというコンピューター関係大手三社の時価総額の合計に相当するという。アップル社は今年も、最も価値あるブランドランキングでトップを飾っている。