円の対ドルレートが20%以上上昇した場合、日本の輸出産業は再び大きなダメージを受け、国内産業の空洞化がさらに進む。震災復興と「輸出立国」戦略の望みがなくなり、経済成長率と物価上昇率が再びマイナスになる可能性がある。中長期的にみると、日本経済は成熟期にあり、深刻な「少子高齢化」による労働力の減少、国内市場の需要縮小が経済成長に影響を与える構造的要因になっている。そのため日本の各産業は中国経済からの利益獲得を望んでおり、中国経済が落ち込むのを非常に憂慮している。大幅な円高などによって中国を抜こうと期待するのは明らかに非現実的だ。
日本には世界第2の経済大国にこだわる声があるのは確かだ。しかし歴史的角度からみると、中国の経済規模が日本を抜いたことは、過去の「不正常」な状態から「正常」な状態に戻り始めただけだ。英経済学者のマディソン氏の計算では、1820年の中国のGDPは日本の11倍、アヘン戦争後の1870年でも日本の7.5倍に相当したという。日本が中国を大きくリードしたのは第3次産業革命期、グローバル化の時代に入った後で、中国は改革開放を通じて「不正常」を「正常」に戻した。日本が逆転するには、過去のように歴史的発展のチャンスを先につかむしかない。しかし日本が頼りにするバイオ、省エネ、情報技術はいずれも新しい技術革命とはいえない。中国も同じように機先を制する能力と意思があるからだ。経済回復が必要な日本にとっては、中国の経済成長から利益を獲得し、新興産業を模索・育成することこそが当面の急務である。今は第2の経済大国にこだわっている時ではない。(作者:日本福山大学経済学部 馬成三教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年1月21日