構想されていたアジア共通通貨がアジアを団結させ、米ドルに対抗するためだとすれば、ユーロの動きもしくは欧州債務危機はアジア共通通貨のこの構想に渇を入れる存在になる。
アジア共通通貨の提唱者が直面する最大の問題は、アジアと欧州の状況が大きく異なることだ。欧州にはドイツとフランスの2大強国が存在すると言われるが、この2カ国の実力に差がないわけではなく、ドイツの実力はフランスを大幅に上回っている。ところが、ドイツは政治面の利益を考慮し、フランスやさらに多くの欧州諸国に対して意欲的に代価を支払っている。これこそ、ユーロが存在してきた理由である。
アジアに「ボス」は存在するか。政治・経済上の同盟が形成される可能性はあるか。日本経済はかつてアジアの「ボス」だったが、アジアの政界の「ボス」を夢見ない日はなかった。これまでに、アジアのほぼすべての国が日本の政治統率力を認めていないのと同時に、多数の国は日本の経済モデル(植民地経営モデル)を忌み嫌い、そのためにアジア共通通貨構想を違う方向に解釈している。円を中心とするアジア共通通貨をアジア人が受け入れるはずがない。