ソニーはかつてすべての人々が憧れる存在だった。経済学者ジム・コリンズの著書『ビジョナリーカンパニー(原題: "Built To Last")』の中では、アジアの企業として唯一、永続性のある「ビジョナリーカンパニー」に選ばれ、人々から「21世紀型企業」と称された。しかし、時代が真の21世紀を踏み出そうとする一方で、ソニーは皮肉にも「20世紀型企業」に退化しつつある。
ソニーと共に業績を下げている日本企業はみな、大手の電子企業である。2011年度末時点で、シャープの純損失は38億ドルになる見込み。これは同社が1912年に創立して以降最大の純損失である。シャープよりも深刻な状況にあるのはパナソニック。同社は輝かしい歴史を残してきたが、2011年度の純損失は102億ドルに上る見通しである。これは同社だけでなく、日本の全メーカーをみても史上最大の純損失である。
日系電子企業は海外市場で中国や台湾、韓国の企業に勝てなくなっている。それはコストの問題ではなく、日本企業がグローバル戦略を誤ったこと、技術を世界に拡散してしまったことなどに起因する。これらの原因により日本企業の海外戦略はとん挫してしまった。
当然ながら、日本のすべての産業が低迷したわけではない。建設機械、部品製造、精密機械、特殊材料、特殊化学品などの分野では、日本企業が依然トップシェアを誇っている。
ルネサスの車載マイコンは約50%の世界シェアを誇る。同社の工場は大震災により稼働停止に追い込まれ、それにより名古屋からデトロイトまで各地の自動車工場の生産が中断した。
また、ボーイング787の3分の1の部品が日本製である。東レが供給する炭素繊維により同機は一層省エネ化された。東レはソニーほど有名ではないが、日本を代表する競争力をもったメーカーである。
電子分野にも注目すべき点は多い。低迷してはいるものの、日本の電子企業はまだ世界最先端の技術を持っている。また、今回の失敗からも新時代を生き残る教訓を学べるに違いない。