米国のシンクタンク・ケイトー研究所の貿易政策研究センターのダニエル・イケンソン主任は11日、首都ワシントンで行われたシンポジウムで、中国との貿易戦争を回避することが、米国の貿易政策にとって最優先で考えるべき問題だとの見方を示すとともに、米国が善意を示し、中国の市場経済国としての地位を早急に承認し、中国に貿易上の公平な待遇を与え、両国の共同の利益を促進するよう呼びかけた。
▽中米貿易は互恵・共同利益
イケンソン主任によると、世界1位と2位の経済体の間で一連の貿易紛争が起こるのはおかしなことではない。だが2009年の貿易摩擦が転換点だった。一方で、米国経済は2009年に深刻な低迷を迎え、失業者が急増し、財政難に陥った。その一方で、中国は2けたに迫る成長率を維持し続けた。一連の専門家や政策制定者は「米国は一体どうしたのか」と考えつつ、自分の打ち出した政策の誤りをなんとかするために身代わりの羊を探すことに努め、米国は中国の勃興を見過ごしてきたのではないかと問いかけた。
イケンソン主任は米中貿易は互恵であり共同利益であると強調する。米国国内の雇用は国境を越えた協力や世界的な供給チェーンへの依存がますます高まっている。イケンソン主任は次のような例を挙げる。現在、ゼネラルモーターズ(GM)の中国での生産台数は米国本土での生産台数よりも多く、アップル社の電子製品も中国の供給チェーンと不可分だ。米国国際貿易委員会がまとめた研究報告によると、中国が米国に輸出する製品のバリューの約50%は中国が生み出したものであり、残りの約50%は米国、日本、欧州、韓国、オーストラリアなどの国が生み出したものだという。
米中貿易は米国に利点をもたらしており、貿易黒字の情況だけをみるべきではない。だが一部の米国人はこの点をみることなく、自由貿易の利点に疑問を抱き、米国を中国の奸計に満ちた貿易政策の犠牲者に仕立て上げ、中国の「罪状」をあげつらっている。たとえば通貨操作、ダンピング、補助金、知的財産権の盗用、技術移転の強制、差別的な自主イノベーション政策、輸出制限といった罪状だ。そしてこれらの罪状が米国の対中投資および対中輸出を妨げ、米国の製造業と雇用創出に影響を与えているという。イケンソン主任によると、大統領選挙の年には、政治家は票獲得などのために挑発的な政策を打ち出し、米中関係にマイナス影響を与えるのだという。