しかし今でも、安い労働コストが中国の競争力の要因と考えるならば、浅薄な見解というものだ。事実、2003年には富士通のような日本企業が徹底的なオートメーション化を果たし、人的コストを圧縮して生産コストの2%以下に抑えている。そしてNECはセル生産方式でパソコンの生産時間を1秒に短縮させ、毎日の生産量を上げた。この時から、中国の低廉な労働力の優位性は揺らいでいる。それでも日本企業が中国に生産を移した理由は、NECが明確に意識していたように、中国の人的コストが安いためでなく、固定費用の一部を流動費用に変えることで大幅にコストを下げられるからである。さらに重要なこととして、中国という巨大市場に接近できるからであった。
では、どうしてレノボはノートパソコンの生産を日本に移すのだろうか。レノボだけでなく、ヒューレット・パッカードなど外国企業の一部も、日本に生産を移管している。日本企業の日本回帰はさらに多くみられる。製造業の日本回帰がちょっとしたブームになっているのだ。その理由は、神話にも似た製品の品質に対する信頼が「日本製」にあるためである。
日本製にブランド効果がある以上、中国企業もこの資源を無駄にする理由はない。レノボが日本に生産を移すのも当然なことである。
創造力が求められる経営革新