周牧之: テレビの勝敗

周牧之: テレビの勝敗。

タグ: 周牧之 ソニー テレビ部門 日系企業赤字

発信時間: 2012-06-05 16:24:12 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

東京経済大学教授 周牧之

 

かつて世界最大のテレビメーカーであったソニーのテレビ部門が7期連続の赤字に陥った。金の成る木が金食い虫に変わってしまった。ソニーの市場価値も、テレビ部門の長期赤字が足を引っ張り、10年前の10分の1にまで下落した。同様にプラズマディスプレイパネルの覇者たるパナソニックと、液晶の名門であるシャープのテレビ部門も大赤字に転落した。東芝はほとんどすべてのテレビ生産を海外OEMに委ねており、日立に至ってはテレビの国内生産を打ち切った。日本は1985年には6000億円を超えるテレビ輸出大国だったが、今や5000億円近くのテレビ輸入大国に落ち込んだ。

テレビ産業の衰退は、日本企業が工業生産のパラダイムシフトへ迅速に対応できなかったことに原因がある。

情報革命は工業生産に2つの新しい課題を突き付けた。1つは工業製品の複雑化であり、もう1つは工業製品寿命の短縮化であった。

工業製品に情報機能を持たせるためには、計算、記憶、通信、動力、機械、表示、操作などの機能を取り付けなければならない。工業製品はより精密化し、複雑化が進む一方となった。

工業製品の寿命の短縮化とは、半導体が「ムーアの法則」に沿って高速進化することに刺激され、工業製品のイノベーションが益々早まり、製品の寿命が益々短縮化されることを指す。新製品、ニューバージョンを求める消費者心理と消費志向の多様化、個性化をも、工業製品の寿命をさらに圧縮している。

寿命の短縮化に対応するため、製品開発と生産プロセスの簡素化により開発からマーケット投入までのスピードを上げる必要がある。しかし、複雑化が、製品の開発と生産をより煩雑にさせる傾向がある。伝統的なモデルで工業生産の新しい課題を解決することは難しくなった。こうしたなかグローバルサプライチェーンというニューモデルが生まれ、工業経済は大変革期を迎えた。

グローバルサプライチェーン方式の下、企業が製品開発から市場投入まですべてのプロセスを網羅するビジネスモデルを放棄し、経営資源をコア部門に集中させ、グローバルサプライチェーンを通じた国に跨る企業間の分業と協力をもって、投資圧力を低減し、開発と生産の時間を圧縮させるに至った。

グローバルサプライチェーンの根本は、モジュール生産方式である。同生産方式は工業製品をモジュールに分解し、「デザインルール」を守る前提のもと、個々の企業が各モジュールに対して、半自律的に開発と生産を行う。これらのモジュールが組み立てられ、最終製品になる。

モジュール生産方式の重要な特徴は、関係者に対してデザインルールを公開することである。オープンな標準という特性を持つデザインルールは、各モジュールメーカー間、及びモジュール生産者とデザインルール制定者との間をつなぐことによって各関係者の間に暗黙知の擦り合わせが最小限に圧縮され、情報交換のコストと時間を大幅に削減し、企業間分業の効率を大いに高める。

このような資本関係、国籍を問わないサプライチェーンは、極めて高い柔軟性を持つ。組み立て企業が世界中でモジュールメーカーを自由に選べることによって、モジュールの高性能化と低価格化を促した。

しかし日本企業はピラミッド方式にこだわっている。組み立て企業と部品企業間の暗黙知の共有と擦り合わせが濃厚であるため、大企業を頂点に一時部品企業、二次部品企業などから構成されるピラミッド型協力関係が作られた。日本の製造業はかつてこのような強固なピラミッド型製造関係を形成したことによってこそ、高い国際競争力を勝ち取ったといえる。

しかしこのような企業関係は二つの重大な欠陥がある。一つは、暗黙知の共用と擦り合わせが莫大なコストと時間を消耗することである。2つ目は、資本提携、人員派遣、人脈などで形成された暗黙知の共有メカニズムが極めて強い閉鎖性を持つことである。排他的な企業間関係は、交易関係の硬直化をもたらす。部品企業が協力体制の外側で市場開拓することは難しい。と同時に組み立て企業の部品メーカーに対する選択の幅も狭められる。

日本企業は垂直的、内包的な生産モデルをこれまで堅持してきた。コア部品の設計、製造そして最終製品組み立てといったサプライチェーンをなるべく企業グループの中で収めようとしてきた。このような一グループの力で、グローバルサプライチェーンに対抗するやり方が、生産規模の限界及び開発コストの高騰などをもたらした。

こうした破局がすでにテレビ製造から家電全領域にまで及び、2009年に日本は家電純輸入国に転落し、同業界の従業者数はいまや1985年の3分の1にまで激減した。

2011年10月18日、中国の総合家電メーカーであるハイアールが、8億人民元で三洋電機の洗濯機と家庭用冷蔵庫の事業を買収した。新興勢力は日本家電業界の再編成を促し始めた。

 

掲載誌:中国新華社『環球』雑誌2012年第2号

 

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年6月5日

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