比較優位の原理は多くの経済学者が認めるものだが、この理論の要諦は、中国やインドといった発展途上国は製造業で競争力を持つというものである。それに対してアメリカは、ボーイングの飛行機やハリウッド映画、抗癌薬といった知識集約型産業で優位性を持つ。ハーバードビジネススクールの修士であるロムニー氏がこの理論を知らないことが、むしろ驚きである。実のところ、アメリカ証券取引所が1998年に発表した資料によれば、ロムニー氏が主管したベンチャーキャピタルが香港のアウトソーシング企業に投資しており、これは比較優位の原理に沿ったものだ。優位性を利用し中国から利益を獲得することは、極めて妥当なのである。しかし、労せずに得をして得意がった後で、中国が不公平な競争をしていると責め立てるのはあまりにも納得しがたいでなかろう。
中国を取り上げて議論するのは選挙年の慣行になっており、票集めの基本テクニックである。筆者は、ロムニー氏が本当に中国を為替操作国にしようと考えているわけではないことを信じたい。たとえ同氏がそれを決断したとしても、共和党のビジネスエリートや国会がそれを阻むだろう。もし強行すれば思惑と反して、北京の反撃を受け、アメリカと中国は同等の被害を受ける。ロムニー氏は自分が持ち上げた石を自分の足に落とすことになる可能性が高いのだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年7月23日