シャープの危機には、客観的な原因と、人為的なミスが存在する。まず、製品が単一的という問題だ。シャープの町田勝彦会長は、21世紀にすべてのブラウン管テレビが液晶テレビに変わると考え、液晶パネルの生産に集中的に取り組んだ。2002年に液晶パネルの亀山工場を設立し、同工場は最先端技術の象徴となった。しかしフラットテレビの製造環境に大きな変化が生じ、部品を組み立てるだけで高品質の製品を製造できるようになった。コア部品の液晶パネルも、製造設備を導入すれば、容易にロット生産が可能となり、品質に大きな差はなくなった。これを受け、液晶パネルの価格が低下した。シャープは環境の変化に対応できず、液晶パネルに力を注ぎ続けた。2009年10月には、投資総額が1兆円に達する、世界最大の液晶パネルを生産できる堺工場の建設が始まった。当時の片山幹雄社長は、「60インチ以上の液晶パネルならば、世界に競合相手は存在しない」と誇らしげに語ったが、実際にはそうではなかった。液晶パネル技術は、すぐに韓国・台湾企業に追いつかれ、境で生産された液晶パネルは販売が滞り、大量の在庫を抱えることになった。堺工場の4-7月の生産能力の利用率は、わずか30%のみとなった。堺工場への投資は過剰投資で、リスクが高すぎたことは明らかだ。他にもまた、円高進行の問題がある。多くの日本企業はリスクを避けるため、海外に事業を移転している。しかしシャープはその動きが遅れており、主に国内生産を維持している。これは産業の空洞化を防ぐかもしれないが、円高によりシャープのテレビ輸出が、致命的な影響を被っている。ここから、シャープの製品が単一的で、判断にミスがあったことが分かる。技術優勢の消失は、企業にとって深刻な結果をもたらす。