パナソニックは今年3月、約500億円で東京汐留ビルを売却した。また4月には、同社が社長と会長の報酬を半減し、今年中に数百億円の人件費を削減するという情報が伝わった。同社はこのほどさらに1000億円相当の株を売却し、社債など有利子負債の返済に充てるとした。かつて一世を風靡した日本のトップ企業は、なぜ自社資産の売却を続けているのだろうか。新華網が伝えた。
◆家電市場のシェア低下
パナソニックの中国市場におけるシェアが低下を続けている。市場調査会社の中怡康が発表したモニタリングデータによると、パナソニックの2012年の冷蔵庫販売は市場全体の2.00%(前年比0.18%低下)、エアコンは2.04%(0.12%低下)、洗濯機は7.52%(1.17%低下)、テレビは2.81%(1.77%低下)となった。中でも特にテレビのシェア低下が深刻だが、業界関係者は「これはパナソニックがプラズマテレビに固執した戦略と関連している」と指摘した。
パナソニックは過去10年間で約130億ドルの赤字を計上した。最近の業績報告書によると、2011年会計年度の7721億円の巨額の赤字に続き、同社は2012年に約7650億円の赤字を計上すると予想した。中国電子商会の陸刃波副秘書長は、「パナソニックの2年連続の巨額の赤字は、円高などの外部要因の他に、戦略決定のミスが原因としてあげられる」と分析した。同社は先ごろ三洋電機を買収し、新エネルギー事業へのモデルチェンジを大々的に進めたが、同事業は現在も規模化されていない。同社の現在の収入の7-8割は、家電製品と川上部品だ。同社はまた、テレビ、デジカメ、白物家電などの新製品発売ペースが競合他社を下回り、赤字の原因になっている。
◆格下げによる投資家離れ
パナソニックは近年赤字に陥っており、財務状況が悪化を続けているため、世界大手格付け会社は2012年末に同社の格付けを修正した。フィッチ・レーティングスは同社の格付けを「BBB-」から二段階引き下げ「BB」とし、見通しを「ネガティブ」とした。スタンダード・アンド・プアーズは同社の格付けを、下から2番目の「BBB」とした。ムーディーズは同社の格付けを「A2」から二段階引き下げ「Baa1」とした。その理由は、収益の先行き不透明感と高負債水準だ。日経新聞は、同社がこれまでムーディーズから、これほど低い評価を受けたことはないと伝えた。
格下げの中で発行された社債は投資家から冷遇される。投資リスクを回避するため、投資家は信用格付けの高い社債に資金を投じている。
◆不明瞭な経営戦略、苦境脱却は困難か
パナソニックは3月28日に、2015年会計年度(2015年4月から2016年3月まで)の中期経営計画を発表し、2015年までに3500億円の営業純利益を実現するとした。同社は今後2年間で2500億円を投じ、新たな再編により苦境から脱却する。
パナソニックの計画によると、重点事業である自動車用電子デバイス・家電事業で、2018年までに売上高をそれぞれ2兆円に引き上げ、同社の売上全体の半分を占めることになる。しかしこの二つの事業が、どの製品を成長の支柱とするか、どの種類の製品がどれほどの売上を記録するかといった具体的な内容は含まれなかった。
産経新聞は、「パナソニックの新たな中期経営計画の中で、今後の成長プランが具体的に示されておらず、またかつて世界市場を席巻したテレビとカメラに匹敵する、企業の業績改善を促す具体的な製品についても示されなかった」と指摘した。
◆相次ぐ資産売却
ロイター通信は3月5日、「パナソニックは約500億円の価格で、東京のオフィスビルを日本の2社の投資会社に売却する」と報じた。同社は不動産売却により資金を調達し、自社の現在の財務状況を改善する。同社は売却後も10年間に渡り同ビルを賃貸し、ビル内での事務を継続する。
パナソニックは4月17日、「当社は津賀一宏社長と、今年6月末に会長に就任する長栄周作副社長の報酬を、今年7月より前年同期比で半減する。またその他の役員の報酬を約2割削減する」と発表した。
共同通信社は5月2日、「パナソニックはトヨタやホンダなどの約1000億円の株を手放し、負債・利息の返済に充て財務状況を改善する」と報じた。今回の株売却による収益のうち、約300億円が2012年会計年度の財務報告書に反映される。
陸副秘書長は、「減給も資産売却も節約の措置であり、外部からの信頼を勝ち取る狙いがある。しかし日本家電大手は、さらに開拓を強化しなければならない。最近の円安は日本製品の輸出にとって有利だが、円安が継続されるか、日本家電大手が再起を実現するかについては、今後の経過を見守る必要がある」と語った。
2年連続の赤字に対して、パナソニックは資産売却や役員の報酬削減といった手段を講じているが、これだけでは最悪の財務状況を短期的に緩和・改善することしかできない。劣勢を徹底的に覆すためには、事業・製品戦略の調整が重要になってくる。かつて一世を風靡した外資系大手企業のパナソニックは現在、業績悪化、投資の冷遇という深刻な苦境に立たされている。同社は今後、どのように経営を立て直すだろうか。(編集YF)
「人民網日本語版」2013年5月8日