だが世界経済にとっては、この1回目のチャンスはすでに終息しつつある。第一に、米国と西側国家では金融危機によって経済が衰退し、世界市場は低迷し、外需が縮小している。第二に、米国と西側国家の政策は貿易保護主義に回帰しつつある。とりわけ米国は、中国人が米国人の仕事を奪ったと認識しており、米国を再工業化し、自国での生産に回帰したいと考えている。だが中国の経済構造の転換は、中国を契機とする2回目のチャンスを世界経済に与えている。中国経済の発展に伴い、中国人の収入が向上し、輸入需要が拡大している。また中国国内の資本投資の過剰は、中国の海外投資の歩みを加速している。
中国人の購買力の高まりは、米国と西側諸国の経済にとっては吉報となる。中国経済がますます強くなることは、中国の企業と中産階級の消費者層がますます強くなることを意味し、米国と西側諸国の輸出の買い手が増すことを意味する。米国が再工業化し、輸出を拡大するためにも、買い手を探す必要がある。中国はすでに、世界最大の買い手に変身している。また米国が再工業化するには投資が必要となり、米国に対する中国の直接投資も重要なファクターとなる。