▽法整備や安全性などが課題に
米国社会では、無人運転車の法制についての議論が広がっており、その争点は次の二点にしぼられる。第一に、もし無人運転車が交通事故を起こしたら、責任を負うのは自動車メーカーなのか、それとも無人運転システムの供給者なのか。また無人運転車の自動車保険にどのような法律を適用するかも問題となっている。第二に、アップルの携帯電話でユーザーの位置情報が監視されているとの情報が明らかになったように、ここ数年、無人運転車のメーカーや無人運転システムの供給者、衛星ナビゲーションサービスの供給者が無人運転車のユーザーの走行データを不当に保存さらには使用するのではないかという不安が広がっている。ユーザーの居場所などの個人情報の保障を適切にできるのかなどが大きな課題となる。
日本情報通信総合研究所研究員の山口平八郎氏によると、自動運転車の実現には次の課題がある。第一に、法制整備。自動運転車で事故が発生した際の責任の所在をどうするか。自動車メーカーに責任を取らせるのか、自動運転システムの開発者か、それとも運転者か。事故に対する「自動車保険のあり方」の変更も必要となる。第二に、技術・安全面。自動運転車と手動運転車が混在して道路上に存在することで問題が引き起こされる可能性がある。交差点の右折などでは、手動運転車の運転者はほかの運転者とコミュニケーションを取ることで事故が起こらないようにしている。だが自動運転車は、道路インフラからの情報を受け取ることで状況を判断する。そのため自動運転車同士だけでなく、人間と自動運転車がコミュニケーションを取れる手段の開発が必要となる。