だが当の安倍首相は、これほど大きな下落は予想していなかったと見られる。英紙フィナンシャル・タイムズに寄稿した論文「私の『第3の矢』は日本経済の悪魔を倒す」で安倍首相は、かなり楽観的な見方を示していた。「私がよく聞かれる質問は、日本経済は、4月に実施された消費税増税に耐えうるのかというものです。1997年の場合と異なり、兆候は元気づけられるものです。夏の旅行の予約は昨年よりも好調です。私は、消費は多少落ち込んでも、一時的なものとみています」
だが現実はそれに反している。少なくとも2つのデータが安倍首相の楽観論に冷水を浴びせている。第一に、今回の増税は1997年時より「元気づけられるもの」と言えるだろうか。データは、今回の増税後の状況が1997年の増税時よりもひどいことを示している。当時の第2四半期の経済縮小は年率換算3.5%だったのに対し、今夏は6.8%にのぼった。
第二に、夏季の旅行は過去よりも力強い伸びを示していると言えるだろうか。実際はこれとは違う。円安などの影響を受け、海外旅行に出かける日本人は減少している。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2014年上半期の日本の出国者数は801万6200人で、前年同期比2.9%の減少となった。