このように円安は多くの産業に多大のメリットを与えるが、すべての業界がプラスを享受できるわけではない。中でもエネルギー、食品などの輸入産業や電力業界が蒙るダメージは計り知れない。電力産業を例にとると、発電に必要な石油・天然ガスや石炭はほとんど輸入に依存している。特に東日本大震災における福島原子力発電所の重大な事故以降、日本の使用電力の30%以上を占める原子力発電所が安全のためにすべて操業を停止。その結果日本のエネルギーの輸入が急増し、コストも急上昇している。ある試算によれば、東京電力の場合、1円の円安で330億円の燃料コストの負担増になるという。
運輸・製紙・食品もデメリットを蒙る業種である。石油天然ガスの輸入コスト増加、ディーゼルや液化天然ガスの価格上昇によって、物流・配送業などの輸送コストは大幅に上昇。製紙業も原料を輸入に頼っており、円安によるコスト増加は決して小さくない。日本製紙の場合、1円の円安で8億円の利益が消えるといわれる。さらに日本は米のほか多くの食品を輸入しており、円安になれば輸入食品の価格上昇は免れない。
今巷ではこんな言葉がはやっている。「アベノミクスによる金融緩和策の経済成長効果は全くないが、国民生活には大きな被害を与えている。アベノミクスならぬ『値上げノミクス』であると」
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2014年9月9日