金融緩和政策を実施することが、日本を長年苦しめてきたデフレ観測の転換に一定の効果をもたらすことは確かで、最もわかりやすい効果としては上がりすぎた円相場を適正な水準に引き戻し、外国人投資家を日本の株式市場に呼び込むことが挙げられる。だが大幅な円安になっても、日本の輸出が大きく増えることはなかった。輸出総額は国際金融危機発生後に2年連続で増加したが、米国、欧州、アジアなどの主要輸出先への輸出量指数は横ばいか低下している。これに燃料や原材料の輸入価格の上昇が加わって、14年の日本の経常収支の黒字は1985年以降の最低を記録した。
また金融緩和政策の投資促進効果も期待したほどではない。統計によると、14年の日本のマネタリーベース(日銀が供給する通貨)は前年比36.7%増加し、広義マネーサプライ(M2)は同3.4%増加し、貸出は同2%増加した。日銀がまとめた統計データによると、金融緩和政策を実施した後、日本国内の銀行の金融資産で伸びが最も大きかったのは普通預金で、これはつまり、日銀が国債購入の規模を拡大したため、民間の銀行が国債を日銀に売り、売って得た資金を普通預金の形で日銀に預け、資金が日銀の帳簿に戻ってきたということだ。そのため超金融緩和政策をうち出しても実体経済に恩恵が及ぶことはなかった。日銀のバランスシートの規模の国内総生産(GDP)に対する比率は60%を超えており、米連邦準備制度理事会(FRA)の金融緩和政策実施後の20%の水準を大幅に上回る。