◆ 中国社会の変化と発展方式の転換
急速な経済成長に伴い豊かになった中国社会だが、都市病、国民間の所得格差や環境汚染といった高度経済成長に伴うひずみが生じ、また経済の量的拡大の限界を意識せざるを得なくなっている。そこで登場したのが発展方式の転換という発想である。一定の経済成長を遂げつつも経済の質的向上を優先し、持続可能な発展を目指すわけだ。大きな社会変化を踏まえ、IT化、サービス業の開放、生態環境の重視、国有企業改革断行、民営化促進など重要なキーワードが13・五計画に盛り込まれるものと推察される。なかでも特に重要視されているのが「融合」であろう。
改革開放以降、中央政府によるマクロ的な指導はあったものの、各産業分野、各地域では高度成長を優先するあまり、それぞれが単独でバラバラに動き、長期的視野に立った調整が十分に行われてこなかった。このことが生産効率の低下、環境汚染の深刻化、重複建設による過剰設備など多くの矛盾を生み出してきた。今、中国社会は少子高齢化の時代を迎え、人口ボーナスに頼った量的拡大による経済成長が難しくなっている。新たな経済成長を実現するためには、産業や地域の枠を越えた「融合」に突破口を見出そうとしている。例えば、製造業とサービス業の融合、産業とインターネットの融合、地域の融合として主体機能区の設置、国を越えた融合としては一帯一路やシルクロード構想である。従来は関連性をもたせずに、個別に行われていたものを融合することに新たな価値を創出する手法である。