歴史を振り返ると、技術の進歩は便利を求めて実現してきたともいえるが、人類が便利で豊かになる反面、大きな矛盾を生み出してきたこともまた事実である。もちろんインターネットの普及もその例外ではない。より広範囲により多くの情報のやり取りが技術的に可能になったことで、知らないところで個人情報が盗み取られ犯罪に利用されたり、偽の情報によって多くの人が迷惑を被ったりすることも少なくない。また、日本でも近年問題となっているネット依存症に陥り、社会に溶け込めない若者の増加など、新たな社会問題も生まれている。これらの問題を解決するため、今回の大会で「管理」がキーワードになったのだろう。
その一方で、今やインターネットは世界経済の発展に欠かすことのできない産業になっている。農林水産業や鉱工業でも原材料の調達から製品管理、製品販売まで幅広くインターネットが利用され、すでに現場と市場とが直結している印象を受けざるを得ない。中国では盛んに発展方式の転換が叫ばれており、その実現のためには「中国製造2025」とともに打ち出された「インターネットプラス(互聯網+)」戦略が、これからの中国を経済大国から経済強国へと発展させるカギを握っているといえよう。中国でのインターネットの普及は長足の進歩を遂げ、職場や自宅はもちろんのこと、ホテル、空港、レストラン、駅など、多くの公共施設でWifiが設置され、どこでもインターネットに接続することが可能となっている。筆者の個人的な感覚ではあるが、このことは技術大国といわれる日本よりも進んでいるように思える。中国におけるインターネットの発展は、技術やインフラ整備の後発優位性を活かし、既設のハードによって身動きの取れない先進国を越えて、一歩先んじているところも少なくない。中国でのこのインターネットを活用した経済発展モデルが、今後の世界の経済発展の標準となるとの予感がしてならない。
(本稿は筆者個人の意見であり、所属機関を代表するものではありません。)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年12月16日