世界的に見ると、製造業の新たなる競争の幕があけたように見える。アメリカはハイテク製造業を国内回帰させ、ドイツはインダストリー4.0を標榜している。製造強国を目指す中国も、今年5月に「中国製造2025」計画概要を発表。3Dプリンター技術を工業革命の牽引力の1つとしており、同技術に大きな期待をかけている。
ハルピンで先ごろ、3Dプリンター産業発展フォーラムが開かれた。全国から120名以上の研究者や企業家が集まった。3Dプリンターが中国の関連産業に大きな転換をもたらすなど、誰もが楽観的な雰囲気だった昨年と比べ、今回のフォーラムは全体的に冷静かつ理性的だった。
「我先に」は禁物
3Dプリンター技術がもたらす新たなチャンスをいかに掴むか。世界3Dプリンター技術産業連盟の主席執行官の羅軍氏は、「3Dプリンターで飛躍するためには、以下の2つの条件が必要だ。1つは国際的な研究人材。もう1つは持続的な資金投入である」と述べる。つまり、飛躍のカギは素早い行動ではなく、念入りな準備にある。
工業レベルの3Dプリンター技術は1986年にアメリカで誕生した。ただし一般に知られ始めたのは2012年からだ。当時オバマ大統領は、一般教書演説においてアメリカの製造業における3Dプリンター技術の重要性を説いた。ここで無視できないのが、3Dプリンター技術はアメリカですでに数十年の蓄積があったことだ。
米シンクタンクのウィルソン・センターが発表した「世界の先進的製造業の趨勢レポート」によると、アメリカのR&D投資額は世界首位で、その4分の3が製造業に向けられている。アンドロイド、先進素材、快速成型技術などで優位性が高い。
フォーラムに参加した企業家は取材に対し、「自社で3Dプリンター技術を研究して2年が経つが、輸入設備の模倣にすぎず、独自の特許など備えてない。人の尻馬に乗るだけのやり方では国際的なレベルに達するのは難しく、“飛躍”からは程遠い」と明かす。
中国3Dプリンター材料理事会の副主席である肖波氏は、「ひとまずハイレベルの3Dプリンターはわきに置き、ボールペンのボールを考えよう。そのほとんどが日本製だ。このような製品を極限まで追求する精神こそ、中国の全ての業界が改めて考え、学ぶべきことだ」と述べる。
安売り競争は禁物
フォーラムに出席したある企業家は率直に話す。「我々が最も得意とするのはコストコントロール。原材料コスト、労働力コスト、土地のコスト、税務コスト、環境保護コストなどで「メードインチャイナ」の神話を作ってきたのだ」。
中国企業のこのような特技に対し、新松機器人自動化公司のハイテク装備及び3Dプリンター事業部の総経理助手の張翼飛氏は、「輸入3Dプリンターの設備と材料はとても高いが、だからといってコストコントロールができなくなることを意味しない。むしろ独占技術で高利潤を享受できる。中国が同様の価格と品質のものを模倣できるのを待っていても、人々が蓄えた技術は新技術にとって代わられるか、利益率が低くなるだけ。すると、中国製品は再び市場を失ってしまう」と述べる。
つまり、将来の世界市場に食い込むためには、安さではなく、質や革新技術を強調すべきなのだ。
技術の欠落を補うために、中国3Dプリンター技術産業連盟は2016年から2億元の産業投資基金を投入する。この資金は技術導入と R&D実験室に投資される。
将来を展望すれば、中国の製造業はこれまで以上に知恵と理性を使い、「我先に」という態度を改め、「安さを売りにする」という従来の伝統を乗り越えるべきである。結局、「中国製造2025」は今後10年、中国製造強国を建設していくための行動指南である。飛躍に10年かけても遅すぎることはない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年12月27日