日本語の「匠」には、精神的な意味が多く含まれる。ひとつのことに一生をかけて研鑚を重ね、極めるのは、日本では珍しいことではない。業種によっては、数十代にわたって1つのことをやり続ける家もある。
匠の精神といえば、45人しかいない小さな会社のことを採り上げないわけにはいかない。世界の技術大国が、この小さな会社の小さなねじを求めている。
この会社はハードロック工業株式会社という。彼らが生産するねじは「緩むことがない」と言われている。誰もが知っているように、ねじと言うのは緩むものである。しかし、ねじが緩むことで命にかかわる事故も起こる。たとえば高速列車は、長期的にレールと摩擦を起こし、振動も大きい。普通のねじでは耐え切れなくなり、容易に脱落してしまう。乗客で満載の列車にいつ壊れてもおかしくない危険性がはらむ。