現在中国は約220種類の工業製品の生産で世界一であり、製造大国として名高い。しかし品質という点になると、中国製造業が上位にランキングされることはあまりない。数量は多いが付加価値が低く、ミドル・ローエンド製品が主流で、国際的ブランドが少ない、というのが中国製造である。その原因は“アバウトさ”にあり、企業に“匠の心”が不足しているからである。
“匠の心”がなければ市場競争力は生まれない。短期的観点からすると、やり直しが増え、人件費や材料コストが利益を圧迫し、製品の市場競争力を弱める。長期的にはブランド力が失われ、付加価値の伸びず、モデルチェンジ・高度化も困難となる。
今年の《政府活動報告》では、技術を磨き上げる“匠の心”を育てることが打ち出された。日本の軽工業製品やドイツの精密工作機械・計測器、スイスの精密腕時計など、匠の心が一国の製造業に大きな経済効果や生命力をもたらした例はどこにでもある。国際金融危機の発生以降、各国は製造業を発展させること一層重視しており、中国がその一角を占めようと思うのならば、“匠の心”を育てることが何より必要だろう。
“匠の心”はどこから
“真剣にモノを作る”という態度は、製品の品質に対する“こだわり”として表れる。市場競争力の源泉は製品にある。高速成長の時代には派手な広告や多種多様なセールストークで一部の消費者を引き付けることができた。しかし高速成長は永遠には続かず、最終的に生き残るのは製品自体に競争力を持った企業しかない。従来、多くの中国企業は規模の拡大を追及し、品質重視の姿勢が欠けていた。その結果、一部の中国製品では十分な設計がなされず、細部において日本製やドイツ製に遅れをとることになった。中国経済が新常態に入った現在、高速成長に頼って利益を得ることはもはや難しく、消費者の品質に対する要求も高まる中、何の工夫もない製品を作っている企業はいずれ行き詰まることになる。
技術を磨き上げるという企業文化は一朝一夕にできるものではないが、早急に結果を出したいのならば、企業のしくみを強化するのも一つの案である。
“匠の心”を育てるには外部環境の支援が欠かせない。匠の心を育てるということは、“多くの匠”を育てるということである。そのためには会社の各部門が制度をうまく利用し、高度な技能を持った人たちを引き付けることが必要。それと同時に知的財産権を保護し、ニセモノを厳重に処罰することで、新たな経済効果が明確になり、企業のイノベーションパワーも高まるのである。
中国は“匠の心”のベースを持っている。中国の匠の心は航空機やロケットといった、これまでの多くの産業の中で、きちんと受け継がれてきている。匠の心を育てるには今がチャンスである。個人消費が高度化し、高品質の製品やサービスが一段と求められるようになっている。匠の心をもった企業は必ず市場から高評価を受ける。中国の企業が“アバウト”から“匠の心”に変わることが期待される。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年4月2日