米エクスプレス・ ウェストはこのほど、米国の高速鉄道計画について、中国鉄路国際(米国)有限公司(以下、中鉄国際)との合弁会社設立に関するすべての活動を正式に停止したと発表した。同社は「米連邦政府が高速鉄道を米国内で建設することを規定しており、プロジェクト推進はさまざまな問題に直面する。また中鉄国際は(米国)政府の許可取得が困難だ」と説明した。中国鉄路総公司はその後、法に基づき抗議すると表明した。本件は中国製高速鉄道海外進出に共通する、リスクアセスメントの不足という問題を反映している。
まず最も目立つのは、投資目的国の国情への理解不足だ。米国の同プロジェクトを例とすると、中国側のプロジェクトチームは米国人が高速鉄道を歓迎すると過度に楽観していた。高速鉄道を建設すべきかという話題は、米国で物議をかもしており、建設反対が多数派となっている。これは米国の自動車保有台数が2億5000万台以上で、ほぼ1人1台保有しているからだ。高速道路網が発達し、かつ9割以上が無料であるため、自動車による外出が最も中心的だ。米国の都市の分布も中国ほど密集しておらず、都市間の移動は近距離であれば車を使い、長距離であれば発達した空の便を利用する。鉄道は貨物輸送用と位置づけられており、しかも乗客と貨物を同時輸送することがほとんどだ。高速鉄道の建設は旅客専用線を敷く必要があり、利用率低下が懸念されやすい。
次に金融リスクだ。メキシコの高速鉄道プロジェクトを含む一部の海外高速鉄道プロジェクトは、直ちに現地で合弁会社を設立していない。合弁会社を設立すれば、相手国側はすでに投資を行ったわけであり、より積極的になる。これは大きなメリットだ。現地政府や世論からの圧力は弱まるだろう。
リスクアセスメントの根本的な問題は、高速鉄道建設に必要な、国際的視野を持つ人材の不足だ。中国製高速鉄道は、(1)高速鉄道のニッチ分野の外国語を理解し、専門的な海外プロジェクトを理解するマネージャー(2)国際ビジネス交渉に精通し、国際民事・ビジネス法務、特に契約書および賠償要求に熟知した人材――という国際的な人材を必要としている。国内の教育・研修が満足できる程度に達していない状況下、中国は合弁会社を設立し、相手側により多くの責任を担わせることで、最大限に不足を補うべきだ。しかし長期的に見ると、自力更生が必要だ。
我々は未来を見据え、中国製高速鉄道の海外進出に自信を持つべきだ。この自信の礎となるのは、中国製高速鉄道の核心的競争力だ。中国は研究開発から製造、さらには施工・建設に至る系統的な高速鉄道技術を持つ世界唯一の国であり、全系統・全要素の輸出を実現でき、「スムーズ、高品質、低コスト」という大きな長所を手にしている。ドイツや日本などの先進国は、高速鉄道の開発で強みを握っているが、どれほど素晴らしい技術であっても実験室を出なければ価値を示すことができない。中国ハイエンド設備製造業の代表者である中国製高速鉄道には、ドイツや日本など高速鉄道先進国の成熟した技術を融合させた上で改良を行っており、経験豊富でチームワーク抜群のコスト削減に秀でた施工チームがいるという唯一無二の強みがある。(筆者:王夢恕 中国工程院院士、レール交通専門家)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年6月14日