理論上では、一国の通貨高はその国の経済情勢が良好であることを示す。しかし円高の背後には経済好転の兆しが見えない。日本政府と経済界は為替レートと日本経済の現状が一致していないとの認識で一致しており、懸念を示す。円高は日本製品の輸出や、米ドル建て決済を行う海外の日本企業にも影を落とす。日興証券の試算では、円高が1円進むごとに東証上場企業1800社の経常利益が0.8%吹き飛ぶという。年初から円高が12円進んでいる状況をみると、これらの企業については合計5兆円の利益が消失したことになり、日本経済への影響は推して知るべしだ。
円高は国内外の複数の要因で決まる。日本国内では円高を支えるような経済環境は整っていない。海外要因としては、投機資金による円買いが今回の円高の主因の1つだ。原油相場の低迷、米利上げ観測の後退などを背景に、海外の投機資金が相対的に安定している日本円に向かっている。市場では、日本政府は「市場規律に背く」というレッテルを貼られることを恐れ、安易な為替介入を行わないと見られており、これが投機資金の流入を助長している側面もある。シカゴIMM通貨先物ポジションの動向を見ると、日本円の先物はここ2カ月での最高水準に達しており、国際市場でも円高期待が高まっている。
「アベノミクス」はこれまでにない困難に直面しており、円安基調は終了した。日本のCPI上昇率は0%付近で低迷しており、GDP成長率は依然として1%にとどまる。「アベノミクス」の使命が達成される日はまだまだ遠いようだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年6月22日