中国企業が欧州企業にM&A(合併・買収)攻勢をかけている。今年上半期だけでM&A件数は164件に上り、しかもこうした買収劇は水面下で静かに進行しているもようだ。 一方で、紙面を賑わせた買収劇としては、美的集団による独産業用ロボットメーカー、クカの買収と、河北鋼鉄集団によるセルビアのスメデレヴォ製鉄所の買収の2件が記憶に新しい。
オーストリアのディ・プレス紙が世界4大会計事務所の一角、アーンスト・アンド・ヤングのレポートを引用して、13日付で報じたところによると、中国企業による欧州M&Aの件数は今年上半期だけで2014年通年を上回ったという。買収額も大幅に伸び、総額724億ドルと過去最高となったことから、2016年通年も過去最多になることは確実だとしている。なお、2015年は通年で計183件だった。
アーンスト・アンド・ヤングによると、中国が買収を強化する理由は次の2つあるという。1つは、欧州には未公開株式投資会社が売り出す株が多く、中国の投資家が強い興味を示しているため。本国の経済成長が減速していることもあって、他の国で買収対象を物色する流れが強まっているようだ。もう1つは、中国企業が新規事業分野の開拓を急いでいるため。従来の大規模生産から専門分野に特化したハイテク製造業への転換が迫られており、「その分野で先行している海外企業を買収するのが一番手っ取り早い」からだという。