日本政府は2日、総額28.1兆円の新経済対策を閣議決定した。事業規模でみると、鉄道・港湾などインフラ整備が10.7兆円、資金繰り支援など中小企業対策が10.9兆円、保育士・介護職員の待遇改善など一億総活躍社会の実現の加速が3.5兆円。数字だけを見ると迫力があるが、具体的な内容を分析すると、実り多い対策とは言い難い。
まず、新経済対策は見かけが大規模だが、内容はそれほどでもない。総額は非常に大きいが、国と地方の直接の歳出(真水)は7.5兆円に過ぎないうえ、インフラ整備の6兆円は低利の財政投融資だ。一部は2016年度の2次補正予算案で、残りを17年度の予算案や特別会計で編成する。このため、今年の経済成長への寄与度はそれほど高くはない。特に、東京と大阪を結ぶリニア中央新幹線の投資計画が論議を呼んでいる。JR東海は自己資金と銀行融資での建設を計画していたが、日本政府が財政投融資の活用を提起。利払いの負担が軽減されるものの、全線開業の大幅な前倒しを要求しているため、JR東海が受け入れるかは未知数だ。
次に、新経済対策の効果について各界で見方が異なる。政府は「未来への投資を実現する経済対策」と銘打ち、今回の経済対策で16~17年度の実質国内総生産(GDP)の1.3%押し上げを図るとしている。しかし多くのアナリストは、新政策の消費のけん引効果は非常に限定的だと指摘する。統計によると、日本の実質賃金指数は5年連続で前の期を下回っており、2015年の実質賃金は2000年の94.6%に相当。これが消費の停滞を招いている。総務省が発表した6月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は物価変動を除いた実質で前年同月に比べて2.2%減少した。減少は4カ月連続。季節調整して前月と比べると1.1%減だった。これは2014年4月の消費税引き上げの影響をまだ引きずっていると言える。企業の経営環境も厳しさを増しており、東証1部上場企業の2016年4~6月期決算の経常利益は前年同期に比べて大幅な減益となっている。マイナス金利政策の影響で、大手銀行5グループの2016年4~6月期の最終利益は前年同期比27%減となった。年初からの円高進行で企業収益が大きく圧迫され、製造業の生産拠点の海外移転が進む可能性もある。