中国国家統計局によると、11月は社会消費財小売総額の伸びが今年最高となったほか、輸出の伸びもプラスに転換、都市部失業率も3カ月連続で5%を下回った。統計からは中国経済の強い活力がうかがえるが、一般の人はマクロデータをみてもピンとこないだろう。それよりも「身近な経済学」のほうが景気を実感することができるのではないだろうか。
11月11日のオンラインショッピングのバーゲンセール、「双11」(独身の日)に続く新たな一大イベントとして、業界が仕掛けたオフライン(実店舗)版のバーゲンセール、12月12日の「双12」は大いに盛り上がりをみせた。大型ショッピングモールは1000店近く、スーパーやコンビニは5万店、飲食店は55万店と、イベントに参加した店舗数は前年の3倍にも上り、スーパーやベーカリーには朝から長蛇の列ができるなど、消費者の旺盛な購買意欲が垣間みられた。
オンライン版の「双11」もオフライン版の「双12」も景気の善し悪しを推し量る指標であるが、一体何がこれほどまでにバーゲンセールを盛り上げさせたのだろうか?
ある企業関係者は、「モバイル決済で、1人あたりの決済時間が平均8秒短縮されたことも背景にあるのではないか」と答える。この8秒間というのは、一見短く感じるが、これが持つ意味は非常に大きい。以前は現金やクーポン券、メンバーズカードを持ち歩く必要があったが、モバイル決済が普及したきょうび、スマホだけで「買いたい時にいつでも買える」ようになった。手軽で便利な買い物が消費の高度化をもたらしたわけだが、旺盛な消費市場の背景には、モバイル決済などのICT(情報通信)技術のイノベーションがある。イノベーションはオンラインとオフラインを繋いだだけでなく、新たな人口ボーナスも育んだ。