改革と調整の20年
日本経済は1980年代末に隆盛を極めた後、衰退を始めた。だが日本は今でも、極めて裕福な先進国の一つである。2015年の時点で、日本のGDPは世界3位の4兆8千億ドル、一人当たりGDPも3万2480ドルで依然として世界のトップレベルにある。対外純資産は339兆3千億円(1元は約16円)で世界一、個人金融資産も1700兆円余りで世界一である。外貨準備高では、日本は2006年まで長期にわたって世界一の座を保ち、2006年以降は中国に抜かれたが、依然として第2位にとどまり、2015年9月には1兆2300億ドルに達している。日本にはまた、半年分の消費需要に応じることのできる石油備蓄、さらに大量のニッケルやクロム、タングステン、コバルト、モリブデン、バナジウム、マンガン、インジウム、白金、レアアースなどの戦略物資備蓄もある。これらは事実上、モノの形を取った外貨準備であり、戦略的な意義はより高いと言える。
それだけではない。日本の失業率は3%前後で、最も高かった2002年でも5.4%にすぎず、欧州諸国の多くの8%以上を大きく下回っている。国民の生活水準も欧米先進国より高く、自然環境や大気の質は依然として世界最高の水準にある。日本は世界の産業チェーンのハイエンドに位置し、企業の技術革新能力も依然として一流である。ある意味では、過去の20年は日本にとって、改革・調整の20年、鍛錬の20年、制度革新の20年だったとも言える。
日本経済が長期的な低迷に陥ったのは主に、過去の日本において出現していた、自身の実力を超えたまやかしの繁栄を、徹底的に清算しなければならなかったためである。絶え間ない改革を経て、この20年の間に、日本経済の未来の発展を支える次の3つの重要な条件が形成された。第一に、空前のコストの低下と效率の向上。第二に、日本企業の国際化とコスモポリタン化。第三に、持続的で集中的な技術の蓄積。米国の要求に応じた円高へのプロセスで、賃金水準が低下しただけでなく、流通コストと公共費用も大きく下がり、日本は、世界で物価が最も高い国から世界有数の低コスト国に変わった。