起業コスト(一人あたり平均収入に占める起業コストの割合)は米国が1.1%、英国が0.1%、ドイツが1.9%で、日本は7.5%に達し、英国の75倍だ。こうした数字から、日本人は起業に際して煩雑な申告や審査の手続きに直面するとともに、そのために巨額のコストも生じることがわかる。
起業に関して、日本には引用して自慢できるデータは1つしかない。それは日本人がもともと注意深く慎重であり、起業すれば成功率が相対的に高いというデータだ。統計によれば、起業してから5年後の企業の生存率は80%前後に達し、欧米のほぼ2倍という。
今や日本で起業に関心をもつ年齢層は65才以上の高齢者で、毎月一定の年金をもらっている人々だ。生活の心配がないので、逆に一度挑戦してみたくなり、たとえ失敗しても暮らしには困らない。だがこうした退路を残した起業は、高いリスクがない代わりに、高いリターンを得ることもできない。
現在、日本全国の大学で誕生したベンチャー企業は2千社前後に上り、その多くがハイテク分野の企業だ。だがすでに述べたように、日本のベンチャー投資規模はきわめて限定的だ。投資力のある企業はベンチャー企業のために一肌脱ごうという意欲も眼識もない。そこでベンチャー企業にはなかなかの創意工夫とかなりの技術的優位性がありながら、資金や投資が不足しているため、どんなに優れたオリジナルティがあっても、どんなに新しい技術があっても、製品に転化することができずにいる。