洋服棚の周りには芸術品が並べられている。試着のついでに2階の本屋へ行き、音楽を聴いたりコーヒーを飲んだりする。いったい何を売る店なのか。
上海市閔行区にある「禾空間」。女性向け服の製造を20年手がけてきたこの店は、徐々に商品ラインナップを広げてきた。今では飲食、書籍といったライフスタイルを提供する企業になった。「禾空間」を創業した葉寿増氏によると、消費構造のレベルアップに伴って企業はライフスタイルに注目しており、「美学」と「芸術」を商業に融合させるようになったという。
品質の高い商品を開発すると同時に、ストーリーを組み込ませる企業が増加している。その結果、商品とサービスのレベルアップが顕著となっている。
国家統計局のデータによると、上半期の情報伝達、ソフトウェア、情報技術サービス産業は急成長を続けている。1月から5月までの戦略新興サービス業、IT系サービス業、ハイテクサービス業の営業利益はそれぞれ18.1%増、17.5%増、15.4%増だった。工業情報化部の張峰総工程師は、「製造業は生産能力だけでなく産業サービス能力も極めて重要だ。業界間の融合は製造業のバージョンアップの新たな趨勢であると同時に、経済発展の新たなエンジンだ。中国製造業は生産型からサービス型への移行を加速しなければならない」と話す。
プラットフォームのエコシステムが勃興
企業が変われば産業も変わる。かつての産業集積群から、特色のある小鎮またはプラットフォームのエコシステムが重視され始めている。シェアやオープンを重視する構造が表面化している。
江南の特色を持つ歴史街には、芸術の雰囲気のある建築が立ち並ぶ。そこにはカフェやミュージアムだけでなく、パフォーマンスのスペースもある。杭州市臨平にある芸尚小鎮では、アパレルメーカー集積群と関係を持つ人は少ない。この街では、優秀なメーカーが「街の住民」となることを望む。そしてクラウドとつながった工場や、アプリでの顧客共有を通じて、受注や材料調達、生産をシェアしている。
中国服装協会の陳大鵬常務副会長は、「芸尚小鎮は新しい製造業エコシステムのモデルとなるものだ」と話す。「情報技術が浸透するにつれ、産業集積群の地理的優位性やリンケージの有効性が薄れている。今後の集積群とは、産業チェーンのリンケージだけでなく、より多くの『(ネット上の)友人の繋がり』を大きくして価値を高める必要がある」。
現状をみると、立地的、資源的な優位性を頼りに、かつての産業集積群が徐々にプラットフォームのエコシステムを作り出している所が少なくない。産業の提携方式もよりシェア的かつオープン的だ。
専門家によると、目先のビジネスに注目するよりその成長力に焦点を絞るようになったことで、プラットフォームのエコシステムの優位性がますます強まっている。工業情報化部は今後、業界や分野を超えた企業のウェブプラットフォームを育成する予定だ。インフラとなる共通の企業専門アプリを作り、新たな産業形態に合った工業ネットワークのプラットフォームとしていくという。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2018年8月5日