日本の管理学者、大前研一氏の『低欲望社会』の中国語版が今年10月に出版された。本書によると、「低欲望社会」は日本の若い世代の間で、主に欲がなく、夢がなく、やる気がないといった特徴として現れている。ある人はこれらの特徴を中国の若者と照らし合わせても合致することに気づき、そのため中国の社会も低欲望に向かっているという観点を示した。
単純な比較は人々の同問題への注目を促すが、この結論が正しいかについては疑問だ。日本が低欲望社会に入ったことには、次の2つの重要な原因がある。まずは「失われた10年」が日本にもたらした長期的な景気低迷で、次に長期的な人口低成長の悪循環だ。
一部の表面的な現象を見る限り、中日両国には多くの相似点があるようだが、根本的な差によりこの概念を中国の若者に押し付けることが不適切になっている。例えば中国の経済成長率はやや低下したが、7%弱の成長率は依然として先進国の2%以下の成長率を上回っている。都市化の歩みを見ると、日本の都市化率は早くから90%以上に達しているが、中国はまだ60%未満だ。消費について、中国商務部の統計データによると、前年同期の社会消費財小売総額は36兆6300億元にのぼり、うちネット小売額は32.2%増の7兆1800億元だった。これとは対照的に、日本の2018年の全国小売額は前年同期比でゼロ成長だ。中国人が消費の強い意向を持つことが分かる。
また我々は1・2級の大都市が中国の各都市、さらには経済・社会全体の発展を代表すると考えがちで、そのため大都市の一部のすう勢を全社会まで拡大して捉えてしまうが、これは間違ったやり方だ。中国社会を描写・概括する多くの言葉があるが、中国社会は大きく複雑で、地域によって状況が異なる。一つの言葉で完全に概括することはできない。
消費を例とすると、1・2級都市の消費の伸び率低下は消費のダウングレードを証明せず、多くの3・4級都市が依然として力強い消費の勢いを維持している。自動車市場を見ると、2005年以降に3・4級都市の自動車販売台数が占める比率は35%から50%に上がっており、価格8−18万元の自動車が3級以下の都市で最も良く売れている。1990年代生まれが徐々に、国内自動車市場の消費主力軍になろうとしている。
本質的に見ると、1・2級都市のいわゆる消費ダウングレードとは、消費段階が質の消費から急速に感性の消費に移っていることを指す。消費者が自分の個性や価値を示すことのできる商品を求め、感性面の体験を重視している。多くの3・4級都市はまた量の消費から質の消費への過渡期にある。全体的に見ると、中国は依然として消費アップグレードの段階にあり、これは低欲望社会の特徴と合致しない。
一部都市で生じた一部の現象は、経済・社会全体の普遍的な現象ではない。我々は「低欲望社会」の問題を全面的に捉え、単純にではなく複雑に中国社会を見つめ、理解するべきだ(筆者・盤和林 中国財政科学研究院応用経済学博士研究員)。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2018年12月1日