近年、特に2017年以降、2000人弱の専門家が大気汚染の「病源」を特定するため難関突破に挑み、科学的な診断を踏まえた上で「処方箋」を出している。
ー産業構造調整。地域内は鉄鋼の生産能力が大きく、冶金企業が密集している。鉄鋼、コークス、冶金、セメントなどの高度汚染・高エネルギー消費産業は、唐山及び山西省・河北省・山東省・河南省の省境に集中している。山西省・河北省・山東省・河南省の省境は小型冶金企業が集まり、設備、ガバナンス、管理の水準が低い。さらにコークス・鉄鋼、炭素・アルミニウム電解の生産能力のバランスが非合理的で、次の産業構造調整の重点エリアとなっている。
ーエネルギー構造調整。地域内のエネルギー消費構造は単一的で、石炭の消費量が多い。山西省、河南省、河北省は石炭依存型で、北京は石油・天然ガス総合型で、天津、山東省は石炭・石油・天然ガス総合型であり、それぞれ調整が必要だ。
ー運輸構造の調整。地域内のディーゼル車による窒素酸化物の排出量は自動車全体の65%、粒子状物質は99%を占めており、次の運輸構造調整の重点となる。
ー対策の弱点補強。京津冀及び周辺地域の揮発性有機化合物の汚染対策の重要性が日増しに高まっている。ベンゼン、トルエン、キシレン、エチレン、ホルムアルデヒドなどの重点汚染物の対策を強化する必要がある。ガソリン車、ゴム製品製造、コークス製造、アスファルト舗装、化学原料の生産、塗装などの汚染源の管理が重要になる。
「アンモニア排出も粒子状物質を形成する原因の一つであり、大気汚染対策はアンモニアの排出削減を念頭に置かなければならない」中国農業大学教授の劉学軍氏によると、栽培・畜産業にはアンモニア排出削減の大きな余地が残されている。機械を使ったアンモニア肥料の散布、灌漑・施肥一体化などの技術により、半数以上の耕作地の化学肥料によるアンモニア排出を削減できる。畜産業は低タンパク質の飼料を採用し、動物の飼育環境を改善するといった措置により、アンモニアの排出削減を実現できる。
ー北京の非首都機能移転。北京では、自動車排気ガスが現地最大の汚染源になっている。王氏によると、北京の今後の排出削減措置は自動車と生活に集中するが、これではPM2.5の濃度を大幅に低下させることができない。北京のPM2.5濃度をさらに低下させるためには、非首都機能移転の加速が必要だ。
生態環境部大気環境管理司の劉炳江司長によると、京津冀及び周辺地域の構造調整は現在、次の多くの難題に直面している。
産業構造調整が困難。非合理的な構造は長期的な発展の結果であり、短期間内に根本的に変化させることは難しい。産業構造調整、過剰生産能力の解消は影響範囲が広く、雇用など国民生活の問題に関わる。現在の経済奨励策が不十分なため、実施が困難だ。
エネルギー代替コストが高い。京津冀及び周辺地域は全国の石炭の33%を消費している。クリーン石炭燃焼による集中的な暖房供給の比率が低く、分散的な石炭燃焼による暖房の比率が高い。石炭使用を天然ガスや電力の使用に変える作業において、天然ガスの需要が多く、インフラ改造と運行のコストが高く、地方財政の補助の圧力が大きいといった問題が際立っている。
道路輸送への依存度が高い。京津冀及び周辺地域の道路貨物輸送量は貨物輸送量全体の8割以上を占め、全国を10ポイント上回っている。研究によると、一部の大型ディーゼル車の汚染物質排出量は、小型ガソリン車750台分に相当する。地域内のディーゼルトラックによる排出量が基準を超過する問題が深刻で、窒素酸化物とPM2.5の排出量が下がっていない。
劉氏は「これらは確かに難しい問題だ。青空防衛戦に勝利する3カ年行動計画に基づき、取り組みをさらに強化しなければならない」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年3月21日