インド政府は5月13日、小麦輸出を即時禁止することを発表した。インド貿易省は同日、小麦輸出禁止令を即時実行するという通知を発布したが、許可を有する国への輸出は継続することをインド政府に要請した。
地元メディアによると、インドは近頃、深刻な熱波と国内食品(特に穀物)の価格急騰などの問題に直面し、当局は小麦の輸出禁止を通して食品価格を安定させたいと考えている。そのほか、インド国内の小麦生産量の大幅減少が予想されている。
またインド政府は、インフレ抑制の圧力にも直面している。4月のインドのインフレ率は7.79%に達し、インド中央銀行が定める許容上限6%を4カ月連続で上回った。うち、インド市場の小麦価格は前年同期比で7%近く上昇した。
インド政府の小麦輸出禁止は国内の小麦価格の低下につながる可能性があるが、AFP通信は、この措置はドイツで開かれた先進7カ国(G7)農業大臣会合で厳しく批評されたと報じた。
ドイツのチェム・エズデミール農業相は記者会見で、「誰もが輸出規制または市場閉鎖を実施すれば、(大口商品価格の高騰)危機を激化させることになる」と述べた。
インドは世界2位の小麦生産国である。ロイター通信によると、ロシアとウクライナの衝突は黒海地区の小麦輸出量の激減を招き、世界の買い手はインドの供給に希望を寄せている。
『ニューヨーク・タイムズ』は、インドのこの状況下での突然の小麦輸出禁止は世界の小麦市場の供給不足の矛盾をより際立たせ、一部の国と地域で潜在的な飢饉リスクが高まっていると論じた。
中国社会科学院農村発展研究所の李国祥研究員は、「インドの小麦輸出禁止、小麦の世界供給量の減少は供給不足を招き、国際食糧市場の変動を激化させ、小麦価格の上昇に拍車をかける恐れがある」との見解を示した。
英BBCの16日の報道によると、今年に入り国際市場の小麦価格は約60%上昇し、パンや麺類などのコストを押し上げている。
2大穀物輸出国であるウクライナとロシア以外に、ハンガリー、アルゼンチン、トルコ、モルドバ、カザフスタンなどのくにも穀物輸出を規制している。ワシントン国際食物政策研究所の統計によると、4月下旬時点で、世界で穀物の輸出規制を実施する国は16カ国に増加した。多国が穀物輸出規制を実施するのは、ロシアとウクライナの衝突だけが原因ではなく、生産量減少見込みによる「食物確保行動」の1つでもある。
米農務省が先日発表した報告によると、2022/2023年度の世界の小麦生産量は7億7500万トンで、前年比400万トン減少する見通し。
うち、減少幅が最も大きい国はウクライナで、小麦生産量は前年の3分の1になるとみられる。収穫面積と生産量の減少により、オーストラリアの小麦生産量も前年より減少する予想。そのほか、深刻な旱ばつにより、モロッコの生産量は2007/2008年以来の最低水準に低下し、EUの生産量も前年より減少する見通し。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年5月17日