ユーラシア・ランドブリッジの新展開
これが意味するところは、港湾起点のランドブリッジから内陸起点の国際列車がメインの体制に移行していくということだ。これを「ユーラシア・ランドブリッジの新展開」と私は呼んでいる。2016年、この新しいランドブリッジにブランド名として付けられたのが「中欧班列」という名称だ。
中欧班列は東通道、中通道、西通道の3ルートからなり、西1通道がシベリア鉄道、西2通道がカスピ海、西3通道がキルギス・ウズベクルート、重慶が東南アジアに向いているという図式になる。
鉄道コンテナセンター駅は発展し、国際陸港という自由貿易区の国際港務区を形成していく。つまり中欧班列は、国際陸港という国際港務区の戦略に基づいて動いているということになる。成都国際陸港の発展戦略を例に取ると、西に向かうのは欧州やパキスタンなどの「深化西向」の戦略だ。最近話題の中国ラオス鉄道や中国ミャンマー鉄道、中国ベトナム鉄道などは南向で「突出南向」戦略、日韓方面に広がる戦略は「提昇東向」戦略となる。中欧班列はこれら戦略に基づいて運営されている。東向にあたる日韓発貨物の接続は日系企業も頑張っており、日通が2018年5月に重慶・武漢が拠点の「ユーラシアトレインダイレクト」を作っている。日新も「日中欧SEA&RAIL一貫輸送サービス」を商標登録し、2019年4月に横浜港からアモイ・重慶を通ってドイツまでの路線を確立した。2020年12月、武漢新港という長江の港湾管理者が、自らの小会社の船を運航して、既に2019年に開設していた名古屋直行ルートを利用し、武漢コンテナセンター駅から欧州へ運んだ。その後大阪港、釜山港もこのルートに加わり、中部陸海連運大通道という中国人らしい大きな名前がつけられた。
また、在日のシノトランスジャパンは重慶へのルートで同じ国営の中鉄と組んでコストを安くし、威海港経由重慶への物流サービスを提供している。日中韓の高速船ネットワークは、RORO船やフェリータイプの船によるネットワークで、今年1月1日にRCEPが発効したため、初めての日中韓三カ国のFTAということで、コンテナ船ネットワークも含めた、三か国間物流による活性化が期待されている。
2017年から開始された、重慶と欽州港を鉄道と道路でつなぐ西部陸海新通道で、特に大事なのは鉄道だ。北から来る中欧班列のシルクロード経済ベルト、北東アジア航路と繋がる東の長江経済ベルト、南の東南アジア航路・欧州航路の3つの物流を繋ぐ役目を果たしている。つまりこの路線により、3つの地域間の物流が融合するようになるということだ。さらに中国-ベトナム間には中越班列が、中国-ラオス間には中老班列が、中国-ミャンマー間には中緬班列があり、これらは全て西部陸海新通道と共に、重慶を起点に中欧班列とつながっている。