中欧班列の成果と課題
一帯一路イニシアティブの発展成果として、私は以下のことが挙げられると思う。まずグローバルなコンテナリゼーションを推進し、これに貢献したこと。次に、ユーラシア大陸横断鉄道コンテナ輸送をグレードアップしたこと。それから国際複合一貫輸送上の新しいサプライチェーンを構築したこと。東アジアの巨大な国際物流ネットワークインフラも作られたこと。さらに大切なのは、5番目に東アジア複合一貫輸送共同体形成の道を開いたということだ。1から4までをやるためには、日中韓ASEANの共同体を形成するための相互協力が必要であり、一帯一路イニシアティブはまさにこの道を開いたと思っている。
中欧班列が現在のように急成長した影には、新型コロナウイルスの流行がある。
2011年当時の中欧班列の列車便数はわずか17便、コンテナ数で1000TEUに過ぎなかったが、2013年の一帯一路発表後、2014年の数字を見ると、列車便数で285%、コンテナ数で271%と急成長している。2021年は新型コロナの影響を受けているが、1万5183便で146万4000TEUとなっていて、2011年の約1000倍にまで拡大している。
この勢いはまだどんどん続いていくと私は考えている。RCEPがもたらすものは、北東アジア物流の活性化、東アジア域内航路の活性化、中欧班列と中国・アセアンクロスボーダー輸送の接続による活性化だ。そして最も大事なことは、一帯一路とRCEPが連携しているということだ。東アジア域内の物流サプライチェーンも陸のシルクロードと海のシルクロードが融合し、変化が始まっている。欽州港のハブ港化や東アジアと欧州間物流の変容は、アセアンに進出している日中韓の製造企業に大きなビジネスチャンスをもたらすだろう。それに合わせて、北東アジア航路釜山港、日本の5大港・北部九州港も活性化するだろう。西2通道(カスピ海ルート)も拡充されている。中国語で中吉烏と言う西3通道、つまり中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道開発は、2023年から始まる予定だ。
総括すると、一帯一路は国際物流において東アジアの国際物流に大きな利益をもたらしたと言えるだろう。今後の課題は、長大な中国沿岸部を接続域とする中欧班列と、北東アジア航路、東南アジア航路、アジア域内航路、国際RORO船との連携の強化だ。西部陸海新通道と中欧班列の連携強化も必要だ。これらが実現すれば、日中韓三か国の企業に大きなビジネスチャンスをもたらすだろう。コロナ後のサプライチェーンの再構築のため、海上輸送と中欧班列のバランスの取れた利用も必要になってくる。このような東アジア複合一貫輸送体制の構築については、日中韓ASEANの相互協力が不可欠だし、カスピ海ルートのグレードアップや中吉烏鉄道の建設も必要だ。そのためには日中韓ASEANの枠組みを超えた中央アジア諸国との相互協力も必要になるだろう。これらを達成すれば、中欧班列は欧州航路と並び、それを補完するサプライチェーンとなり、ユーラシア大陸の経済を支えるバリューチェーンへと成長するだろう。 (編集=呉文欽)
(プロフィール)
福山秀夫 1980年3月九州大卒。2020年8月日本郵船退職。2004~08年日本郵船北京事務所代表時、中国物流研究会入会、現在幹事。日本物流学会等4学会会員。
人民中国インターネット版 2022年10月13日