ウクライナ危機の長期化と西側・ロシア関係の冷え込みに伴い、欧州各国が直面するエネルギー価格の高騰、持続的な物価高などの圧力が持続的に拡大している。多くの欧州企業が業務構造の調整を余儀なくされている。この過程において欧州企業の間では、生産コストが割安の米国にシフトするという「新たな流れ」が見られる。この欧州大陸で発生している危機を受け、米国は軍事・経済援助や共同制裁などによりウクライナと欧州に「支持」を表明しているが、その一方で欧州の危機を米国の機会にし利益を得ようとしている。「環球時報」が伝えた。
大西洋を跨ぐ同盟国の米国は、このタイミングで欧州の不安を利用し、各種議題への安全問題視と地政学的な見方を強めることで、欧州の米国との協力への依存をさらに強めている。欧州企業に、米国という選択肢が最も安全で信頼できると考えさせている。ウクライナ危機のエスカレート後、米国は半導体製造、サイバー空間、「インド太平洋」事業、インフラなどの各分野で、「エネルギー分野でロシアに過度に依存したように中国に依存してはならない」といった説を絶えず喧伝している。いわゆるロシアや中国との協力に安全リスクがあるという考えを欧州に絶えず必死に押しつけ、欧州の経済活動をより米国中心にし、欧州の「活動範囲」をさらに限定しようとしている。米国はさらにさまざまな場において絶えず欧州に好意を示し、抱き込もうとしている。大西洋を跨ぐ同盟の団結を強化することを口実に、欧州各国が各種議題をめぐり米国側に加わるよう煽っている。特に米国とNATOの「インド太平洋」地域への影響力の拡大に協力するよう求めている。
この何でも安全問題視し陣営を分ける価値観に基づく喧伝により、欧州は一時的に眼前の危機に専念できなくなり、自国の事業と米国の需要の間でバランスを取れなくなっている。これは欧州の「戦略的自主」の歩みを妨げている。結果を見ると、この流れは欧州の米国への一方的かつ非対称的な依存の形成とその定着に有利なばかりで、欧州の経済情勢と政治環境をより厳しくする。
産業を見ると、欧州の上述したような多くの業界が苦境に陥っている。本来ならば強固であった工業生産構造が系統的な変革の試練を迎えている。多くの製造企業が米国に移転すれば欧州が「脱産業化」に向かい、経済の活力と国際的な競争力を着々と失う可能性が高い。投資を見ると、欧州企業の新規投資の獲得が難しくなっている。米連邦準備制度理事会の持続的な利上げにより、投資家は米国への投資を増やしている。米国の新たな「インフラ抑制法案」もまた、より多くの欧州資本を米国の化学品、バッテリー、クリーンエネルギーなどの業界に移転させる。
米国がウクライナ危機により欧州へのコントロールを弱めることはなく、むしろ危機をこのコントロールを強める機会とする。これは本質的に、「大国の競争」に欧州を抱き込み、欧州を米国の戦略的なレールの上に置こうとする米国の需要に合致する。ところが米国の経済回復と世界的な野心を支えるこのやり方は、現在の欧州の窮状につけ込む打撃に他ならない。
欧州内部の苦境の深刻化、米国への恨みと失望の急速な蓄積に伴い、米国に大きく傾く大西洋を跨ぐ関係の天秤がある程度揺り戻す可能性が高い。これはバイデン政権が引き続き欧州の同盟国を利用する上で払わなければならない犠牲でもある。(筆者・孫成昊 清華大学戦略・安全研究センターの学者 王葉湑・米欧研究プロジェクト若手研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年10月18日