米シリコンバレーバンク(SVB)の電撃経営破綻が金融市場にもたらした動揺は収まらない。バイデン米大統領の対策発表は奏功せず、13日は米銀行株の取引停止が相次ぎ、波紋が多くの国に広がっている。今回の危機は米金融政策・テック政策の失敗の結果であり、米連邦準備金制度理事会(FRB)の過激な金融政策及び米国のテック覇権の乱用が原因だと専門家たちは見ている。
米カリフォルニア州の金融保護革新局は10日、流動性・支払能力の不足により、SVBを閉鎖し、連邦預金保険公社(FDIC)を破綻処理の管財人に選任すると発表した。2008年9月以降で最大の米銀破綻となった。
FRBが金融安定を無視し、過激な金融政策を実施し、利上げを繰り返したことが今回の危機の根本的な原因と見られている。低金利の時期にSVBは貯金の大半を米国債などの投資に充てた。ところが、FRBの急激な利上げにより、SVBが購入した債券などの金融資産の価格は大幅に低下した。資産の組み合わせの調整を急いだが、含み損の披露が恐慌を呼び、取り付け騒ぎが発生し、預金者が1日で420億ドルを引き出したことでSVBは徹底的に潰れた。
中国国際経済交流センターの張燕生首席研究員は次のように見ている。FRBはコロナ対策として、「ゼロ金利・量的緩和」の金融ツールを通して経済を刺激し、過剰な流動性を創出し、個人や企業の手元に残ったお金が銀行に流れ込んだ。SVBの投資は低金利時期の当時からみれば合理的だった。しかし、量的緩和により急激なインフレが進行したため、FRBは過激な利上げに急転向し、SVBを撃沈する結果となった。
イエレン米財務長官はこのほど、SVB破綻について「FRBの利上げの繰り返しは核心問題」と明言した。
今後、FRBが金融安定を鑑みずに利上げを強行し続ければ、中小銀行の破綻の連鎖が起こり、システマティックリスクが発生し、大手銀行も巻き込まれ、米国の金融基盤を揺るがす事態になりかねないと張燕生氏は指摘した。
また、SVBの破綻には、あまり言及されていない深層的な原因もある。米国の「デカップリング」といった脱グローバル 化政策が自国のテック産業の発展を妨害していることだ。
今年に入り、400社以上の米国テック企業が人員整理を行い、リストラ人数は11万人を上回り、事業縮小を余儀なくされた。それに、テック制裁・技術封鎖・輸出規制・投資審査の厳格化などの措置により、米国のテック産業は最大の市場と完備されたサプライチェーンを失い、先行きの不透明さがさらに増した。
米国スタートアップ企業を顧客とするSVBの破綻は、債券市場の荒い相場が影響したことも否めないものも、米国スタートアップ企業の業績不振による資金面の圧力も原因の一つである。
中国社会科学院米国研究所の馬偉研究員補佐は、「関連政策は米国テック企業の経営を大きく圧迫した。多くの企業は、中国といった世界最大市場との業務の往来を削減せざるをえなくなった。SVBの危機の裏には、テック企業の資金危機と経営危機が垣間見える」と指摘した。
国務院発展研究センター世界発展研究所の丁一凡研究員は、「皮肉なことに、テック制裁は中国企業の利益を損なうが致命傷ではない。米国企業にとってはかえって致命的な衝撃となる可能性がある。たとえば、半導体分野において、中国は世界最大の市場であり、中国に売らなければ、誰に売るのか。まさに自業自得だ」と語った。
急遽訪れた今回の危機の中、過激な金融政策がもらたす金融リスクが浮き彫りになり、デカップリングによるテック業界後退のリスクも際立っている。
1983年に発足されたSVBは、40年のあゆみで米国のテック産業の栄光を見守ってきた。その破綻を受け、米国テック覇権のもとでシリコンバレーの輝きを維持できるのか、SVBの末路はシリコンバレーの未来なのかと疑問を抱かずにはいられない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年3月16日