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黄友義氏:翻訳はもっとも力のあるメッセージ
発信時間: 2009-11-13 | チャイナネット

 

中国翻訳協会の転換と社会の需要

中国翻訳協会が純粋な学術団体から業界団体に転じたことは、ひとつの過程です。どうしてこのようにしたのかと言いますと、社会の需要があったからです。

第一に、社会の翻訳に対する需要が非常に大きくなったことです。改革・開放により、どの業界でも対内・対外を問わず翻訳が必要になりました。こうして翻訳産業という新たな産業が形成されたのです。翻訳産業の市場規模は年間約300億元と推定されます。各種機関の調査研究によると、この数値は毎年15%のペースで増加しているそうです。

第二に、翻訳産業が形成されたことにより、翻訳教育も急速に発展しました。これまで大学には外国語専門課程しかなく、外国文学や外国語しか学べませんでしたが、いまでは多くの人が翻訳専門課程で学んでいます。学部や大学院に翻訳専門課程が設置されるようになり、翻訳教育産業も発展しました。

第三に、民間の翻訳会社が数多く誕生したことです。政府機関の翻訳だけでは膨大な仕事量をこなしきれず、市場の需要に応えることが難しくなったため、翻訳会社が数千社誕生しました。これと同時に、外国資本も中国の翻訳市場に参入しはじめ、中国で会社を設立したり、あるいはコンサルタント会社、文化会社という名目で実際には中国市場の翻訳業務に従事したりしています。

このような状況に対し、中国翻訳協会は一業界団体として、次のような役割を果たす必要があります。①翻訳業界に対し全国的な指導を行う。②業界標準を策定する。③翻訳の品質を高め、翻訳人材を育成する。④業界の社会的知名度を高める。

 

世界における中国の翻訳レベル

中文英訳、英文中訳、中文日訳、日文中訳など、外国語から中国語または中国語から外国語の翻訳においては、中国の翻訳レベルは世界トップクラスです。ただし、ヨーロッパの国々に比べると、私たちには多くの弱点があります。これは中国語の特徴によるものだと思われます。中国人が外国語、ラテン文字の外国語を学ぶのは多少の困難があり、それが関係しているのでしょう。中国には、二つの外国語を操れる人、たとえば外国語をフランス語や英語に訳すことができる人は非常に少なく、これに関してはヨーロッパの国々に及びません。しかし、翻訳人材の全体的な実力は、翻訳業にかかわっている人数及び出版レベルに達している作品をとってみても、世界的に高いレベルにあると言えるでしょう。

 

文化の「走出去」戦略における翻訳の役割

翻訳がなければ、文化の「走出去」(海外進出)について話しても空論にすぎません。翻訳というのは単なる言葉の転化ではなく、文化上の転化だからです。優秀な翻訳者やベテラン翻訳者による翻訳は、単なる文字の翻訳ではなく文化の翻訳なのです。文化の「走出去」とは、中国文化の精髄を世界の人々に知ってもらうことです。たとえば、「有朋自远方来,不亦乐乎」を「友人がやってきた。とてもうれしい」と訳すのと、「遠方の友人がやってきた。なんと喜ばしいことか」と訳すのとでは、後者のほうが古人の当時の言語環境に合致していると考えます。

ほかにも、例えば「弱国无外交」はどのように訳せばいいのでしょうか。もし「弱小国は外交を行えない」と単純に訳したとすれば、これを聞いた世界中の小国は不愉快になり、「中国は私たちを見下している。私たちを弱小だと思っている。私たちは外交を行うことができないのか」と非難することでしょう。この翻訳はしっかりと要点をつかんで、「弱小国に外交なし」ではなく、「あなたの国は小さいので(あるいは弱いので)、国際的に軽視されがちである」とすれば、小国の指導者も受け入れやすくなります。

つまり、文化のソフトパワーを高めるには、心からの、深いレベルでの意思疎通が必要となってくるのです。心の意思疎通を図ることができなければ、かえって誤解が生じ、状況は悪化してしまいます。

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