私はときどき、仕事で回族の人たちと同じホテルに宿泊しているが、とくに食習慣の面では失礼なことにならないよう気を使っている。同じテーブルで食事をする際は、ハシ、スプーン、お皿、食べ物は全部別々で、話の中でもこの人たちの忌み嫌う動物の話題は避けてきた。私が長年勤務していたメディアには、アラビア語のセクションもあったが、聞くところによると、プリントされたものに、イスラム系の人たちの忌み嫌う動物の写真があってはならないので、チェックをくり返していた。日本人はまだこれほど神経を使った体験はないだろう。
しかし、日本の食品企業がこういう分野に進出することは、中国にとってもよい参考となろう。そして、品質管理、新しい食品の開発の面でも参考になることが多いと思う。
イスラム系の人たちの好む食品のかなりのものは、われわれ回族ではない人たちも賞味できるので、マーケット・シェアは大きい。例えば、われわれがおいしい、おいしいと食べているシシカバブーやマトンのしゃぶしゃぶも、もとはと言えば、すべて回族やムスリンの人たちの食べ物であったのだ。北京の牛街というエリアには、回族の人たちのためのスーパーマーケットもあるくらいだ。
中国の輸出品にとっても同じことだが、パッケージの面でも、特に気を使う必要がある。パックのイラスト、写真類は、肌の露出したものは御法度である。
日本のメディアの報道で、かつて日本の一食品企業の原材料の中に、イスラム圏で忌み嫌われる動物の骨髄の粉末が入っていて問題になった、という話もあった。こうした些細なことのように思えることでも、大きな問題となるのだ。
中国では、漢族の人たちは、雑食的傾向があるので、とくに気をつける必要があるが、日本人もあまり厳しい戒律を体験したことがないので、今回の進出は文化人類学、宗教学の学習の機会となるであろう。なるべく失敗のないよう、予習をしっかりしていくことも必要だ。私は一介の老ジャーナリストとしてこの日本企業がいちはやく黒字化することを願うとともに、国内に多民族、多習俗を抱え込んだ経験のかなり乏しい(皆無とは言えないが)日本のビジネスマンたちが、イスラム圏というかなり特異な環境に、大きなコンフリクトに遭遇することなく適応していくプロセスを見守って行きたい。日本の総合商社の歴史をひもといてみると、もしかしたら、予想以上にスムーズにいくかもしれないとも思う。なぜなら、商社はこういう課題を上手に解決する人材をかなり抱えているからだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年8月13日