中国の諺で「高楼、万丈にして平地に起つ」と言う。ただ、例外もある。湖南省西部に点在する「吊脚楼」がそうだ。
湖南省西部は山紫水明の地。この土地に世々代々暮らしてきたトウチャ族やトン族などの生活はすべて、山と水をぬきにしては考えられない。至るところで目にする吊脚楼はほぼ山と水のうえに屹立している、とも言える独特な建築物だ。二、三階しかないが、水面や山の中腹に「吊り下がっている」ので、まるで空中の楼閣を思わせる。造るのは決して容易ではない。
楼に「脚」があると聞いていたが、それは実は、建物を支える数本の粗大な木の杭だった。水辺に建てられた吊脚楼は、二本の長い前脚が川に向かって伸びて底に深く埋め込まれ、川岸に築かれた壁の土台と一緒に楼の一つひとつを支え上げている。中腹の楼では二本の前脚が低地にしっかりと立っていて、別の側の壁土台とともにバランスよく支えている。平地に建てられた吊脚楼もある。長さが均一の数本の木の杭が地面から支えるものだ。湖南省の地誌によると、吊脚楼のような構造になったのはもともと、毒蛇や猛獣に襲われるのを防ぐためだったという。
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