安徽省南部、黔県の西逓村は明清時代(1368〜1911年)の民居がかなり完全な形で残る村落である。緑のなかに映る白壁と青瓦の家々、祠堂、鳥居、楼閣に安徽の典型的な建築風格といにしえの風韻が感じられる。
内外の建築の専門家が「明清民居博物館」と呼ぶ西逓村は、小さな山村に過ぎないが、昔は数多くの偉人を輩出した。史書の記載によれば、明清以降だけでも、よその土地で官吏になった人物は百人を超える。巨万の富を築いた商人も少なくない。彼らは故郷に錦を飾った際、一族の気概を示そうと、大金を惜しむことなく祠堂や住宅、庭を造っていく。こうして600軒の家、2本の通り、99本の小路が縦横に交錯する壮大な建築群が形成されていった。ほぼ昔の姿をとどめる建築物は約120軒を数える。
安徽の建築物では「山と水がなければ、住まいにはならない」と言われる。そのため、場所の選定には環境、自然の趣や山水の霊気が非常に重視された。その意味で、西逓村は典型的だと言うべきだろう。山と河に面し、四面が緑に囲まれていて、心地よい気分にさせてくれる。住むには理想的なところだ。
西逓村に足を踏み入れると、構造が精巧で造りの精美な民居に引き付けられた。極めて巧みな透かし彫り石刻のある飾り窓、庇の反り返った青瓦の門楼は実に典雅で古風だ。高い白壁の下をどこまでも続く通路、花の鉢植えがいっぱいに並べられた庭。穏やかで、調和が取れている。犬や鶏の鳴き声があっても、かなりの静けさを感じさせ、非常に神秘的だ。
安徽の建築では石彫りにレンガ彫り、木彫りが最も有名だ。家の門枠や窓格子、飾り壁は多くが石彫りになっていて、屋根や壁のほとんどにレンガ彫りが嵌め込まれ、母屋や板壁、梁や柱には木彫りが施されている。彫刻様式の多さ、造形の美しさ、手法の新しさで、非常に貴重なものである。彫刻された鳥獣は真に迫り、草花には情緒が溢れ、人物には精神が感じられ、目を奪われてしまうほどだ。その芸術的特徴から言えば、明代のものは悠然さ、明確さ、淡い優雅さを追求しており、清代は精巧さと細密さ、新奇さが重視されている。
住まいはどれもが二階建てで、一階正面の広間は客間になっていて、一家はここで食事を取り、客人をもてなしたりする。両側は寝室で、他人が入ることは許されない。客間と寝室の間に狭い階段が二階に続いている。多くが雑穀などを置く倉庫になっているが、子供の寝室にしているところもある。
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