さて、中小規模の、日中の、事業ベースでのM&Aがトレンドであることを考えますと、これは非常に興味深い話題ですよね。資本力がある日本と中国、マーケットとして魅力がある中国、事業として成功してきた実績のある日本、地理的な近さ、そして、そうしたお互いのメリットが明確であるにもかかわらず(お互いの補完が世界市場でWin-Winでありえることが明確であるにも関わらず)、文化的な差異という大きな問題点があるわけです。
ですが、この文化的な差異というものが、大企業固有のもので、中小規模での事業ベースM&Aでは(一般的には大企業であればあるほど各企業的能力は高いといわれる中で)むしろ克服できるとするならば、実は近年の、こうした、M&Aの増加が何か新しい時代にむかっているような気がしてなりません。
たとえば、中小規模であれば、内部の統制システムは、悪く言えばお互いにそれほど確立されていないでしょうし、良く言えば柔軟性 (flexibility)が高いということができます。また、CEOによる意思決定にもスピードがあり、それが全社的システムを根底から変えるだけの力をもっているでしょう (歴史や過去にとらわれない意思決定ができる: inertial forceがlow levelである)。こうした、柔軟性とスピードが故に、文化差異は、より早く解決され、むしろ大企業のそれ(一カ国内だけのシステム)より早く上位へと障害なく融合していくのではないでしょうか。
いま、まさに、日本経済を牽引してきた「中小企業文化」が「ベンチャー企業」として、そして中国のまさに新潮流としての「ベンチャー企業」とともに、それぞれは小さいものではありますが、世界に類をみない、有機的結合による絶妙なM&Aメリットを発揮してきているのではないでしょうか!
日中の、事業ベースでのM&Aのメリットを最大限に生かすのが、大規模ではなく、中小規模のM&Aなのだとしたら(定義をしなおすとしたら andマクロレベルのグロスでの統計でみるのではないとしたら)、日中間企業融合繁栄の時代は、各メディアで伝えられるような「1990年以降ずいぶん前から久しい」ものではなく、実は「最近はじまった」ものだと思います! 日本のベンチャー企業(orベンチャースピリットをもった中小企業)の皆様、中国のベンチャー企業の皆様、僕も微力ながらお手伝いをしていますが、これからも素敵な組み合わせを期待しています!
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「チャイナネット」2010年3月8日