僕がひとつ、面白く考えれば(あくまでも検証不可能な、なんとなくの考えとして)、ひとつの国が世界に対して相対的に悪い経済環境にたつような状況で、それを打開する方策がなければ、外部環境(世界環境)は、非常に「荒波」ということができます。外に対してひとつの国が以前は力をもっていたかもしれませんが、政治的にも、経済的にもプレゼンスが弱っている状態です。さらに、一国の内部にも政治経済の問題を抱え、解決の糸口がみえないような状態です。そしてそれが深刻な程度まで進行しており、もはや、台風の中のろうそくの炎のような状態を想像してください。しかし、これまでの成功体験(先進国として)があるので、そういった足かせもあるような状態でもあります。
さて、このような状況下において、各取引主体(政・官・産・学・マスコミ・・・)などは、国全体がグローバルな台風にいる中で、各主体レベルで(ミクロレベルで)、対海外でも、それにつられて対国内でも「取引コスト(Transaction Costs)」が高いわけです(これを、取引コストの経済学からいえば、Hazardレベルが高い状態といいます。)。難しい議論は、ここではおいておきまして、そうなると、それぞれが、市場取引すると、各取引主体が融合する(ひとつのヒエラルキーになる)ということが、最もコスト低減になります。つまり、「官・民の一致団結」とか「産学連携」などということが、発展的なものという意味よりも、打開策的なものという意味として発生するかもしれません。
当然ながら、「政・官のあり方を考える」とか、「官・民が・・」というようなことが、何かイノベーション(Innovation:革新)のためになされているのであるならばいい現象であるわけです(例:ゲノム解析と関連する研究開発のために、経産省、文科省、厚労省、大学研究機関、医薬品開発企業、種苗開発企業などが連携する等)。一方で、単に現状を打開するために、何かマイナスからの脱却の方法を見つけるために、具体的な目的なく、各主体が融合していくことは、実は、一国の経済が長期的時系列で下降トレンドなのかもしれません。
政治組織、官僚組織、各産業組織、マスコミ組織、学術組織などなどが、明らかな意図なく、「連携」する状況は、「発展・イノベーション」という言葉でカモフラージュされた下降トレンドのイベントととらえるのはどうでしょうか。そして、その度合が強くなればなるほど、その具体性に欠ければ欠けるほど、その一国は経済的下降トレンドであるということです。
例を上げて、日本でたとえるならば・・・経団連主催、経済産業省・AAA新聞、BBBテレビ後援、甲議員顧問(他多数の国会議員)、乙大学教授評議委員のように一国内の取引主体で構成(他国の取引主体が殆ど入っていない)された「科学技術推進国際フォーラム」など世界的なインパクトをもった大規模をもって行われたならば(ここでの国際というのは、世界にインパクトを与えたいイベント、実際に巨額の資金を投じられた資本力、という意図での国際であって、主催構成メンバーが国際的でなく、むしろ国内的であることを前提にしています。)、そしてそれが具体的な方向性をもった「発展・イノベーション」のためでない場合、「没落国」へのカウントダウンの世界的イベントになるかもしれません。
上海万博の盛況な開幕式、入場者のみなさんをみながら、それが、「先進国」へのステップという正しいであろう議論をもとに、そんな逆の「世界的イベント」を頭で考えていました。日本で、上で書いたような「没落国」へのステップという時系列的予想があたらないことを期待したい次第です(苦笑。
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年5月5日