日本で、コジマ電気(株式会社コジマ)と熾烈な競争を繰り広げている業界最大手となる家電量販店ヤマダ電機(株式会社ヤマダ電機)が中国上陸ということですね。
(http://japanese.china.org.cn/business/txt/2010-05/07/content_19994918.htm)。そもそも海外進出が初ということで、これは非常に注目をしたいところです。理論的に小売業チェーン展開は、最も進出先現地の文化的影響をもっとも受けるわけで、合弁(Joint Venture)でなく、単独での(Sole Venture)としての海外進出は、非常にリスクのある行為であると思わざるを得ません。また日本と中国の小売に対する商行為、消費者意識の差異から考えても、いかにこれを克服していくのか本当に課題が山積しているような状況といえます。たとえば、去年でしたかね、中国家電量販大手の蘇寧電気が日本の家電量販中堅のラオックスに出資し、日本進出をはかりましたが、これは、合弁になりますし、中国で成功している企業が、日本という成長性は低いがそこそこ魅力的かもしれない市場に進出するということで、リスクも少ないわけです(詳しくは、個人ブログを参照ください、全三回の特集のうち最後の記事エントリーで語っています。 http://kozi.jp/blog/?eid=49)。
ですから、気になるのは、どうしてここまでのリスクを取る必要があったのかということです。単独と合弁が検討されたのか。それとも、最初から単独進出のみを検討していたのか、という問題です。
もし合弁も検討されたのだとすれば、その提携先として、例えば、国美電器などもあがったでしょうし、その結果として、すでに国美が他の海外電気量販店との提携があるがために、それができなかったので、合弁ではなく単独進出ということであれば、選択肢として「単独を選ばざるを得なかった」ということですから、これは、「合弁進出するか、単独進出するか」という選択の上で、海外に企業成長の活路を見出すために、「単独進出を選ばざるをえない」ということになります。
危険なのは、当初の事業計画より、「(海外に)進出しないか、単独進出するか」という選択肢だけであった場合ですね。企業文化というのは固有に会って、他企業との提携を好まない企業文化というのは存在すると思います。とりわけ、この創立から数十年で大型合併などをせずに発展してきたヤマダ電機にとって(ヤマダが親会社として吸収することはあっても)海外との大型提携は考えられなかったのかもしれません(短期間で発展した企業は、創業者の意思がより強く影響するということもあります。)。
いずれにしても、1、家電量販チェーンという海外現地での消費者意識、文化からの影響を最もうける業態であること(Localizationの度合いが高く必要とされる業態)。2、進出企業(ヤマダ)が初の海外進出であること(国際化のknowledgeが企業内に殆ど無い)。3、(合弁ではなく)単独の海外進出であること(entry modesの選択ミスの可能性)。4、中国固有の条件として家電量販店業界が成熟してきており競争が激しいこと(Host country固有の問題)。などなど、、、今回のヤマダの中国進出については、多くの問題を抱えた(今後抱えるであろう)意思決定であったと思います。
たとえば、それは、それまで中国に無かったブランド帯域として、ユニクロや無印良品が中国に進出したこととは全く異なるわけです。
もちろん、必ず失敗するということではなく、大成功の結果となることも否定しませんが、理論的には、中国でのビジネス展開は現状ではかなり難しい問題に直面すると思いますから、ヤマダ電器がその克服をするならば、ぜひ注目して経営研究していきたいところでありますね。
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年5月10日