これを解決する方法が、内なるDiversification(多様化)といわれ、多様化していればしているほど、例えば、「各国で異なる」ということそのものを認識し、調整する企業の能力があるということができます。だから、ある企業が母国から他国へ進出した一カ国目よりも、二カ国目、三カ国目のほうが、「多様化の度合い」を強めているため(そして、多様化のノウハウを蓄積しているため)、より卓越した「多国籍文化調整能力を持つ」ということができるわけです。
それでは、ホンダは、どうか・・・。そうですね、世界にすでに数カ国以上の進出(生産拠点、販売拠点)を果たしている超多国籍企業であります。ですから中国国内のみを活動拠点としている生産者・競合よりもDiversificationの度合いは極めて高い企業なわけです。
ですから、僕が今回のニュースで思ったこととしては、確かに、数量や金額ベースの規模では、ホンダは大きな損失をかかえ、さらにそれは中国に大きな社会的インパクトがあるところと思いますが、はっきりいって、ホンダにとっては、さらなく「ノウハウ蓄積」の絶好の機会であるなぁと思ったものです。市場からの不評は大きな損失ですが、原因がある程度特定できる一時的なストライキなどはまさに好機です。そして、こうした、社内の調整能力を、文化的差異の克服能力として変換し、そして他企業よりもより当該国の市場需要に対応した動きをとることができるようになる循環をうみだします。
今回のストライキによって、さらにDiversificationに関連した能力をさらに勝ち得るホンダ。
ますます、中国市場で活気付いていくのではないかと、否定的な報道が多いなか、それとは逆に僕はホンダの潜在的商機をみたのでした。
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年5月31日