日本と中国との経済交流が活発になり、個別企業の資本的提携(equity-based)、非資本的提携(non equity-based)も珍しくなくなりました。その中でこれまで、多くの成功した中国進出日本企業は、製造業とその関連・派生産業でありました。それとは異なった新しい潮流としてサービス業の進出をみることも多くなりましたね。
さてそんなニュータイプの企業進出ケースで、今回注目したニュースは、こちら「日本の弁当店が中国に初進出 北京1号店開店へ」です。
ほっかほか弁当といえば日本でも全国的に知られているブランドですが、このブランドに大きな紛争があったことも知られている事実です。ブランドの所有権をめぐって、裁判で争われました。簡単にその要因をいえば、当時の管理の甘い商標権の問題、フランチャイズ元とフランチャイズ先のバーゲニングパワーのバンランス問題などであると思います。商標については、例えばその類似性、「ほっかほっか」「ほっかほか」の差異や、「ほっかほっか弁当」「ほっかほっか帝」「ほっかほっか大将」などのサフィックス(接尾語)の差異が争点となりました(登録された商標ではないが、故意に消費者を既存のブランドと誤認せしめるような類似性が認められるか)。
バーゲニングパワーについては、フランチャイズ元(Franchiser)が保有する直営店よりも、はるかに1社のフランチャイズ先(Franchise)の店舗数のほうが多い場合におこりますね。フランチャイズ元が数多くのフランチャイズ先企業をたばねている状態であれば、問題ありませんが、1つの巨大なフランチャイズ先が誕生すると、その交渉力に不安定な力関係(例:ロイヤルティー率など)が生まれてしまうことになります。
今回の「ほっともっと」の株式会社プレナスは、強大なFranchiseとして、この問題の渦中にいた企業なわけです。まさに、日本市場において東証一部上場企業にまでのぼりつめた、悪意なく企業努力としての「下克上」を成し遂げたような当該企業が、著作権制度で混沌とした中国に進出をするというのは、企業理念に沿ったストレートな「攻撃精神」だと思います。中国市場では、ブランド維持、商標制度の健全性、食という文化差異がでやすい業種などなど問題が山積みと思いますが、これまでの株式会社プレナスの「超タフ」な姿を中国市場でも展開するのを観察してみたいと思います。
爽やかに巨大資本で展開する旧来の日本の超多国籍大企業(とりわけ日本のお家芸とも言える製造業)の進出とは全く異なった、ロジカルでは無い、すこし「どろっとした」ビジネスの側面を、日本企業として率先して、プレナスが中国市場で体現してくれると興味深いことだとおもいますね。日本企業にはそれほど多くはない「獰猛狂犬型」企業の中国進出、みなさんもある種の「格闘技観戦」としてチェックしてみるといいかもしれないと思います(あくまでも、狂犬という言葉は、良い意味でここでは使っています!)。ファイト!
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年7月26日