こてこての北京の人間模様を描く作家として知られる、劉一達の出世作「北京の子人虫儿(レンチュル=その業界の実力者)」がこのほど、日本語に翻訳され、日本で出版された。
本書は、「北京十記者社会ドキュメンタリーシリーズ」の一書として1994年に中国文連出版社から出版され、これまでに4回増版を重ねてきた。
翻訳を手がけた近藤昌三氏は今年83歳。高校時代から中国語を学び始め、1943年18歳の時に北京を訪れ、東便門辺りの四合院(中国の伝統的家屋建築)で満州貴族に中国語を習い、北京文化に魅せられる。特に北京の胡同(昔ながらの路地)や四合院、風土や人情味に強い関心を抱く。
近藤氏は中日両国の民間文化交流に尽力し、両国国民の友情を深めるため、数多くの貢献をしてきた。90年代には何度も北京を訪れている。氏のかねてからの願いは自らの理解を踏まえて、日本人に北京文化の味わいを紹介することだった。
北京文化に関する数千冊にのぼる本の中から、氏が選んだのは「北京の子 人虫儿(レンチュル)」。知り合いを通じて作者の劉一達をようやく探しあて、北京文化への情熱を語った。劉一達はこの日本の老人の北京に抱く思いに打たれ、日本語版の著作権を譲り渡した。二人の契約後まもなく、近藤氏は転んで足をけがし腰痛が再発して、動くことすらままならなくなったが、病の床にあっても北京への思いは止まず、本書の翻訳に精を出した。一年余りの間に二人が交わした手紙は数十通にのぼった。そして2年後、氏のたゆまぬ力により、ついに「北京の子人虫儿」の翻訳が完成する。
本書は朱鳥社から出版され、同時に氏の貯蓄もほぼ底をついた。中日国交正常化30周年の佳節にあたる今年、氏は「日本の読者が北京風味の文学に触れて、北京をより理解できるよう、生きている間は中日両国の文化交流に力を注いでいきたい」と抱負を語った。
「人民網日本語版」 2008年09月03日