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ライターの多田麻美さん:胡同暮らしに魅せられて
発信時間: 2008-10-15 | チャイナネット

それに加え、四合院では、自然、とりわけ樹木とともに生活できる。通常、四合院には、2本以上の木が左右対称に植えられているが、我が下宿もナツメの木の下だ。お陰で夏は日光が木の葉に遮られて涼しく、冬は木の葉が落ちて日光が十分に入る。気持ちよく自然と共存する智恵がしっかり生かされているのだ。しかも、同じ敷地には柿、アンズ、ザクロ、葡萄の木などもあり、まるで果樹園さながら。四季折々の興趣が増すだけでなく、おいしい「収穫」にもありつけてしまう。

「昔ながら」の中の新しさ

もっとも、中国の人はおおむね、大雑院で暮らすのは貧しい人たち、と思っている様子だ。確かに大雑院では、各世帯にトイレがなかったり、隙間風や雨漏りに遭ったりする。だが住んでいると、全てが完璧ではないからこそ、住民同士の交流や助け合いも頻繁なのだ、ということに気づかされる。つまり、クーラーや自家用車の普及が大気汚染や地球温暖化をもたらすのと同じで、便利になれば失われるものも確実にあるのだ。

現在、古い胡同地区の取り壊しが大々的に進められていて、心痛む。失われ得るのは歴史的建築物だけではない。夕涼みや、おしゃべり、将棋などを通じて多くの住民が交流し、互いをいたわりあう現在の胡同的生活スタイルが消えることも、ある意味で貴重な文化の喪失だ。

大雑院の各家に、快適なトイレやシャワーがつく日は確かに待ち遠しい。だが、日々の暮らしの中に、隣人との交流とか、老後の豊かさ、自然との共存といった、今の社会に切実に求められる貴重な価値観が見つけられなくなる日、それこそが、胡同の生活が「貧しいもの」となる日だ、と思わずにはいられない。

「人民中国インターネット版」より2008年10月15日

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